家族に関する悩み・問題

家族の中に潜む闇

 家族の中で何が起こっているのか、外からは見えません。
 外からは隔てられた空間で、激しい苦痛を伴う、かつ逃げられないように感じる様々な問題が発生しています。
 近年は、それらの問題に対する社会的な施策がとられてきていますが、その支援が心にまで届かないことも少なくありません。

愛着障害

 家族の中でもらえなかったもの、それをずっとを追いかけ続ける、もらえなかったから過剰に人からもらおうとする、どこまでも満たされない感覚を持つ人たちもいます。
 愛着障害とは、幼少時における親などの特定の養育者との愛着形成がうまくいかないことで現れる困難の総称です。
 泣いているときに抱きしめて慰めてもらえる、気持ちに関心を持ってもらえる、一緒に遊ぶなど情緒的な交流を楽しむ、そのような時間を積み重ねる中で、感情を和らげる心の中のクッションを身に着けていくのです。
 このクッションが育っておらず、薄いままだと、自他の感情をダイレクトに感じるので、激しく揺さぶられ、時に強い苦痛に繋がってしまいます。

 自分のことを見つめ、感情に気づき、更にその感情を和らげていく練習を積み重ねる中で、愛着障害からの回復は可能なのです。

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 ・子供の母親の絆
 ・愛着(アタッチメント)の様々な形
 ・安心して甘えられる場

 以下に、家族に関する様々な形を示していきます。

虐待

 親などの養育的立場にある人が、子供に対して繰り返しあるいは習慣的に、暴力をふるったり、冷酷・冷淡な接し方をすることです。
  「不適切な関わり-maltreatment-マルトリートメント」とも言われ、以下の4つ類型があります。

身体的虐待 保護者が子どもに、殴る、蹴る、水風呂や熱湯の風呂に沈める、カッターなどで切る、アイロンを押しつける、首を絞める、やけどをさせる、ベランダに逆さづりにする、異物を飲み込ませる、厳冬期などに戸外に閉め出すなどの暴行を行うことです。
性的虐待 子どもへの性交や、性的な行為の強要・教唆、子どもに性器や性交を見せることです。
心理的虐待 大声や脅しなどで恐怖に陥れる、無視や拒否的な態度をとる、著しくきょうだい間差別をする、自尊心を傷つける言葉を繰り返し使って傷つける、子どもがいる場でDVを行うなどの行為です。
ネグレクト 保護の怠慢、養育の放棄・拒否といったことです。

 近年は、虐待の問題がマスコミでしばしば取り上げられます。
 実際に、虐待に関する悩みで相談にいらっしゃる人たちには、自分が子供に対して虐待をしてしまいそうだから何とかしたいという人、虐待をするぐらいなら自分がいなくなればよいと破局的な考えに囚われている人など、いずれにせよ過去に自分が虐待を受けてきて苦しみが続いている人が多くいます。

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 ・力の感覚
 ・虐待裁判について
 ・子供を守りたい

DV(ドメスティックバイオレンス)

 多くは、「配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力」ということを意味しています。
 DVが社会的に問題視され、配偶者からの暴力を防止し、被害者の保護等を図ることを目的として「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」制定されました。

 男性と女性の間には物理的な力の差、経済力の格差などが確認されることが多いのですが、力を持っているほうが偉いのではありません。しかし、力を持っている方が、または感情的に激しい方が相手を尊重せずに優位に立つことで、お互いに尊重し合えない関係に留まっているのであれば、お互いの関係は不健全なものとなり、精神的な不安定さは増大します。

 近年は、男性から女性のみならず、女性から男性に、ということも報告されています。
 家族やパートナーという親密な人間関係の中では、それぞれが持つ対人関係構築の傾向が明らかになります。それ故に、過去の対人関係を繰り返すように見える人は多くいます。

 DVとは少し異なりますが、モラハラ(モラル・ハラスメント)という言葉も耳にすることが増えました。相手がこちらの思いをわかってくれないことが続き、気持ちをつなげていられない、そんな悲鳴でもあるのでしょう。

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 ・DVとは
 ・BPDという感情制御の問題

アダルトチルドレン

 子どものときに家庭内にトラブルがある、つまり機能不全家族の中で育つことで、大人になった後もその影響を受けて生きずらさを感じている方々のことをアダルトチルドレンと呼びます。
 もともとは、アルコール依存症の親を持った子供に同じ特徴がある、ということから検討が始まったのです。様々な家族内の問題(機能不全家族)でも同様のことが生じていることがわかっています。

 日本では、精神科医の斉藤学氏がアダルトチルドレンを日本に紹介し、治療を始めました。玉井も、斉藤氏とともに心理相談室の責任者として活動しておりましたので、自らをACであると述べる多くの人たちと出会い、心の成長を見届けさせてもらうことも必要です。

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 ・人との距離・境界線

 性という人が持つ欲求が適切に満たされる場、または方法な発露を持たないと、DVや性虐待などといった様々な問題に繋がります。
 性行為という人と親密になることを示す行動は、人にとって癒しにもつながりますが、傷つきやすくなる領域でもあります。

子育て

 子供を育てるという一大事業、これは親や養育者にとっては本当に大変で長く続く取り組みです。
 子育ては学びの多い取り組みですが、全力で生きようとする子供と向き合うには、適切なサポートが必要です。一人ではできません。
 また、様々な子育てについての情報もあふれていますから、混乱もしてしまいます。わかっていても、感情が付いていかない、ということもしばしばあるでしょう。

 心理学では人の発達がどのようになるか、統計的なデータがそろっており、どの年代で何を身に着けていくのかなどの情報を適切に持つことも、そして情緒的なサポートを求めることは大切です。

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 ・愛着と巣立ち
 ・愛着:母子間の絆
 ・安全基地としての親

不登校・ひきこもり

 家から出なくなってしまうひきこもりですが、平成30年度のデータでは61万人という報告もあります。過去には不登校とセットで語られることも少なくありませんでしたが、近年はひきこもりの人の高年齢化も問題として挙げられています。
 学校は、忍耐という社会において必要となるスキルを学ぶ場所でもあります。これは、なかなかつらいものです。もちろん、楽しい経験を持つ人も多いでしょうけれども…。
 学校の中での友人関係のトラブルから出られなくなり、家族の無理解も重なってひきこもってしまった人たちとも出会いました。

 多くのひきこもっている人たちの多くは、ときには超スローとも思える慎重さを示します。そこで苛立ってしまって、動こうとした芽を摘むことのないように気をつけないといけません。
 特に近年は、家にひきこもっていてもゲームなど気持ちを紛らわせるものがあるのが当事者や家族にとっての不幸です。
 外との繋がりが持てず社会との接点がないことで、人としての欲求が満たせず、苛立ちも大きくなります。
 ひきこもりの人たちの苦しみから生じる事件、それを守ろうとする家族による事件などもありました。何とかしようと焦りもするでしょうが、社会との仕組みに繋げていきたいですね。

すれ違い・価値観の違い

 家族間でケンカができていますでしょうか。ケンカ自体は、お互いの気持ちのズレがあらわになった局面であったり、価値観の違いを確認してお互いに不快感を感じることによることが多いので、問題ではありません。

 二人のどちらもが、「私の欲求を満たせ」と思っていると、確実にぶつかります。お互いに歩み寄らないと、適切な関係は維持できません。また、片方が一方的に相手を責めているのは、すれ違いが大きくケンカにすらなりません。
 自分の思ったことを相手に言葉で伝えられる、相手からのYes/Noをちゃんと聞ける、そしてお互いの落としどころを探す、そんなことがどれほど難しいか、多くの人が感じているはずです。

 目の前にいる人は、地球の裏側よりも遠く感じ、言葉が届かない存在のように感じるのです。

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 ・怒りがあっても関係を維持できる
 ・ケンカをしてみた
 ・甘えについて
 ・関係の再構築
 ・日常のことをする

離婚

 パートナーとなった二人が別れることになる時、悲しい喪失体験となります。ただ、お互いにどうしても合わないときに、または許し合えない部分が生活を邪魔するときに、離れることはお互いにとって良い選択肢の一つともなるでしょう。
 別れるという選択肢が悪いのではなく、良い別れを選択できるようになるとよいでしょう。
 もちろん、良くも悪くも、感情は大きく揺さぶられるものです。

家族の中での学びと失敗

 家族には、自分のことを理解してもらいたいですね。
 家族の中では、素直に自分の感情を出せます。それ故に、感情の暴走の結果である悲しいニュースを耳にします。
 家族の中で、人との情緒的な触れ合いを体験し、基本的な対人コミュニケーションの方法を学び、感情を適切に出したり我慢したり、自分の役割の責任を取ることなどを学んでいきます。

 育つ家庭によってルールは様々ですが、それらのルールのいくつかは、生きていくうえで役立つものであるはずなのです。

自己肯定感

①感情は自然なものであり、感じたことを大切にしてよいし、そのことについて話せることはよいこと。
②欲しいものを求めることはやる気につながり、成長へのエネルギーとなる。
③事実を大切に、あったことをなかったことにするのはおかしい。
④生活の中で好奇心のまま考えて動き、楽しめることを持っていることは大切。
⑤求めたことが全てが満たされる訳ではない。時には限界を知り、我慢ができることも大切。意味のある我慢は人生の苦痛を和らげる薬になる。
⑥行動には責任が伴う。人の責任を代わりに取ってあげることもできない。
⑦他者の感情、要求、望みも尊重することは大切。それは自分の気持ちや求めることを尊重しながらもできる。尊重し合えない関係からは離れてもよい。
⑧失敗を恐れ過ぎない。失敗は次の学びにつながる。
⑨問題や失敗に際しては、柔軟にしっかりと考えて、選択肢を確認し、解決に向けて取り組むことが大切。
               『自分をもっと好きになるノート』(玉井仁著)から抜粋修正

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