ボウルビーの愛着研究
愛着(アタッチメント)の研究の端緒は、有名な英国の精神医学者、ボウルビーに始まりますね。
愛着とは、子どもが特定の他者に対して持つ情愛的な絆のことであり、その大切さを訴え、その愛着がないことの問題を指摘したのがボウルビーなのです。
研究では、乳幼児の発達と関連して、どのように愛着が子供の中に定着していくのかが調べられました。少し、書いてみましょう。
- 前愛着段階(生後12週ぐらいまで) 子どもは特定の他者を区別しません。人の声や顔に対して注意を向けたり、微笑したりという行動が見られます。
- 愛着形成段階(半年くらいまで) 愛着を形成していく特定の他者を定めて、目で追いかけたり、微笑したり、発声したりして、自ら働きかけるようになります。
- 愛着形成段階(2.3才ぐらいまで) 愛着を形成してきた特定の他者の後追いをしたり、抱きついたりといった愛着行動が見られるようになります。愛着を形成した人と見知らぬ人との区別がつくようになります。
さらに、愛着の対象者を安全基地として、外の世界に遊びに行くことができるようになります。
そしてその先の時間では、愛着対象者がいなくても大丈夫になっていったり、愛着対象者をモデルにして、自分の情緒との付き合い方を学んでいくのです。
母性はく奪
母性との接触がなく過ごすこと、これを母性はく奪と呼びます。マターナル・デプリベーションとも呼ばれます。
過去には、ホスピタリズムと呼ばれていました。
乳児院などの施設で育つとき、その養育者たちは必死なのですが、沢山の赤ちゃんを数人で見ないといけない、そんなときに適切なタイミングで目を合わせ、一緒に笑い、ミルクをあげて、おむつを替えてあげる、そんな作業ができなくなかったのです。
右にも左にも、たくさん泣いている赤ちゃんたちばかり、なんて環境なのですから。
それでも、今は随分と改善されています。
近年は、施設入所が母性はく奪に直結するわけではなく、虐待や家庭などにおける様々な問題によって情緒的な関係が育めなくなるということで、ホスピタリズムという言葉は使われなくなっていきましたね。
いずれにせよ、愛着形成がうまくいかず、それがその後の心身の不安定や行動障害をもたらすなど多大な影響を与える、ということが指摘されたのです。
あ、ハーローのアカゲザルの実験も有名でしたよね。ま、それは機会があれば…。
最近は、多くの精神疾患の背景としても、この愛着の問題が指摘されることが増えてきましたね。発達障害も、その一つです。
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