大変な人たち
孤独に耐えられない、見捨てられることを避けるために死に物狂いの努力を払い、人が自分を助けてくれ、世話をしてくれるよう仕向けるためには、自殺のそぶりも見せる、などの激しさを示す人たち、そんな大変さを抱えているのが境界性パーソナリティ障害の人たちです。
境界性パーソナリティ障害について報告されている有病率は様々で、一般集団ではおそらく1.7~3%といわれています。精神疾患の治療を受けている人の中での割合は、最大15~20%になるとの報告もあります。
一般人口では男女比は1:1だと言われていますが、実際にこの障害で相談に訪れるという人の75%は女性だと言われます。
私の経験的な感覚でも、この数字は一致しますね。
この境界性パーソナリティ障害の人たちの呼称で、ボーダー、ボーダーライン、BPDなどと呼ばれましたが、それらはBorderline Personality Disorderの略ですよね。
確かに、ボーダーライン、様々な境界線の上にいる人たちとも言えますね。
境界性パーソナリティ障害の診断基準 :DSM5による
DSM-5の診断基準を基本に、わかりやすく紹介します。DSM-5とは、アメリカでつくられた精神疾患の分類と診断の手引きなので細かいものですが、まとめてみたので、一般の皆さんにも分かり易いかと思います。
境界性パーソナリティ障害の診断を下すには,以下の項目の内5つ以上があることが必要です。
それらには、不安定な人間関係,自己像,感情の調整がうまくできない、そして顕著な衝動性の持続的パターンが認められることが必要となります。
- 見捨てられること(実際のものまたは想像上のもの)を避けるため必死で努力する
- 不安定で激しい人間関係をもち,相手の評価を理想化と低評価の間で激しく揺れ動く
- 不安定な自己像または自己感覚
- 自らに害を及ぼす2領域以上での衝動的な行動(例,安全ではない性行為,過食,向こう見ずな運転など)
- 反復的な自殺行動,自殺演技,もしくは自殺の脅しまたは自傷行為
- 気分の急激な変化(通常は数時間しか続かず,数日以上続くことはまれ)
- 持続的な空虚感
- 不適切な強い怒りまたは怒りのコントロールに関する問題
- ストレスにより引き起こされる一時的な妄想性思考または重度の解離症状
これらの基準を満たす症状が、成人期早期までに始まっている必要があるが,青年期に生じることもあるとされています。
一生懸命な人たち
私自身も、このような激しい方たちとはいろいろな形で出会うことがあった、ということを書いてきましたが、一生懸命だなぁと思います。
様々な他の精神疾患を抱えていることも少なくありませんしね。
先日書いた、双極性障害との区別も大切です。
実際に、過去の生育歴を辿ると、過去のストレスが過大であったり、虐待を受けてきたという人も少なくありません。実際の研究報告にもそれらは示されていますし、私が書いた論文でもそれについて触れたことがあります。
明日は、回復に向けた取り組みについて、書こうと思います。
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