精神疾患

精神疾患を理解する⑮ 分離不安症について理解する

クロッカス

分離不安とは…

 昨今、愛着の問題が多く語られるようになってきました。

 過去にはボーダーライン(境界性パーソナリティ障害)などの背景として多く家族関係が注目され、複雑性PTSDという診断基準を作ろうという機運が高まったり(成立していませんけど)、最近では発達障害の一因としても取り上げられたりしています。

 乳幼児の発達過程において、母親的役割を担う人を「安全基地」と呼びますね。

 少しずつ母親から離れて、外の世界の探検を始める、そして知らないことに出会って不安になれば、母親のところ、つまり「安全基地」に戻ります。

 そのようなことを繰り返して、少しずつ「安全基地」を自分の中に取り込み、安全基地から離れることができるようになっていくのです。

 この、安全基地から離れられない人、それが分離不安といってもよいのでしょう。

 DSM5ですから、米国のデータになりますが、成人における12ヵ月有病率が0.19~1.9%で、子供の場合には6~12か月有病率が4%程度となっています。

分離不安症の診断基準について  DSM5による

DSM-5の診断基準を一部そのままに、そして簡潔にして紹介します。DSM-5とは、アメリカでつくられた精神疾患の分類と診断の手引きなので細かいものです。
 【】はその項目をまとめたものですので、一般の皆さんにも分かり易いかと思います。

A.【安心をくれる人から、自分の年齢に応じた距離を維持できない】

愛着をもっている人物からの分離に対する、発達的に不適切で、過剰な恐怖または不安で、以下のうち少なくとも3つの証拠がある。

(1)【離れ離れになることへの過剰な苦痛体験】家または愛着をもっている重要な人物からの分離が、予測される、または経験される時の反復的で過剰な苦痛

(2)【愛着対象がいなくなることへの過剰な心配】愛着をもっている重要な人物を失うかもしれない、または、その人に病気、負傷、災害、または死など、危険が及ぶかもしれない、という持続的で過剰な心配

(3)【離れてしまうことをずっと想像している】愛着をもっている人物から分離される、運の悪い出来事(例:迷子になる、融解される、事故に遭う、病気になる)を経験するという持続的で過剰な心配

(4)【離れることを恐れて外に一人で行けない】分離への恐怖のために、家から離れ、学校、仕事、または、その他の場所へ出掛けることについての、持続的な抵抗または拒否

(5)【一人で過ごせない】1人でいること、または愛着をもっている重要な人物がいないで、家または他の状況で過ごすことへの、持続的な抵抗または拒否

(6)【一人で寝られない】家を離れて寝る、または、愛着をもっている重要な人物の近くにいないで就寝することへの持続的な抵抗または拒否

(7)【離れ離れになる嫌な夢が繰り返される】分離を主題とした悪夢の反復

(8)【離れる不安が身体化する】愛着をもっている重要な人物から分離される、または、予期される時の、反復する身体症状の訴え(例:頭痛、腹痛、嘔気、嘔吐)

他、B.C.D.項目は省略します。

簡潔にまとめると、その不安や回避行動は、子供であれば4週間、成人では6ヵ月にわたり続き、学校生活や職業生活などの社会生活を困難にしており、そのほかの病気ではない、ということになります。

 この分離不安症、子供の場合には遺伝性もあるという指摘もあり、文化差も大きいですね。

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