心理雑感

『意識とは何か』苧阪直之著

意識について考える

 昨日は,予定通りにオンライン・グループを行いました。

 特に,参加された皆さんからの話題がなかったので,最近,玉井が考えていることから何となく話が広がりました。

 感情を調整すること,これは『7つの感情』(当研究室代表,玉井著)の書籍にもありますが,一定の知識と訓練である程度可能となります。
 先日,ある夜に不快なことが頭を離れず,「そのこと考えること自体の無意味さ」と,「その考えに紐づけられて出てくる感情の不快さ」について,検討していました。感情については,かなり速やかに距離が取れ,少し不快な感覚は残らざるを得ないものの,あまり影響のないレベルになっていました。

 ただ,思考がなかなか止まらんものだなぁ,と観察を続けていました。実際には,考えること自体からも離れれるために,呼吸法を実践していたのですが,ふと気が付くと思考に引き戻されてしまっているのでした。

意識はなくならない

 意識は,生きている限りはなくならないと考えてもよいと思われます。

 一方,思考からは訓練によって離れることができるようにもなります。

 グループの参加者からは,「考えない」ということについて,「依存症は否認の病気だというから,自分が依存症だと考えられないということなのかな」という意見もいただきました。
 ただ依存症の場合には,思考から離れているのではなく,「私は依存症ではない」という考えから離れられていない,簡単に言うと「自分は依存症を抱えている」ということを認められないということになりますよね。認める,これも思考です。それも,あるベクトルを持ち,注意集中ができ,それを認識したうえで自分と特定の関係にある,という考えを持つに至るということでしょう。

 今日は,苧阪先生(京都大学名誉教授)の少し昔の本,1996年の『意識とは何か』について,上のようなことから手に取っていたので,簡単にご紹介。意識の研究は,脳科学の研究と合わせて改めて注目されてきているが,その基本的知識を整理するには役立つと思われる。

 最近,意識ならぬ,無意識についてずっと考えてきており,私の博士論文では「無意識という構成概念の言葉を,『生命力』と表現する」という可能性について触れました。
 この無意識を感じるために,この2年ほどは,臨床動作法にも取り組み,学会にも入って勉強をしています。これは,面白い。以下に意識が無意識(本来の私たちの身体がもつ生命力そのもの)の力を感じる邪魔をすることがあるのかについて,ひしひしと感じているところ。

 もちろん,意識,そして思考も,これは私たちが社会生活を行う上で,他の生き物に比べはるかに優位性を保つために機能してきたということは言うを待たないが。

意識の研究

知覚
心的イメージ,運動,注意,閾下知覚,自動性,内観の言語報告,感覚・運動モジュール

記憶
潜在記憶,ワーキングメモリ,短期記憶,容量限界,プライミング,記憶増進,エピソード記憶,記憶リハーサル,手続き的記憶

プランニング
自己制御,意図,技能,心的努力,目標志向行動,意思決定,問題解決,主観的時間

睡眠
睡眠,夢,覚醒,催眠,放心状態,昏睡状態,麻酔状態

その他
注意のハビチュエーション,網様体賦活系 など

三つの意識

  リカーシブな意識とは,自己に向かう再帰的(リカーシブ)な意識という意味。逐次直列処理系。

 アウェアネスとは,何かに気づく(aware of)という働きを含む。同時並列処理系。つまり,気づかないコトは並列で走っているということ。呼吸,心臓の働き,足の裏の地面の感触,視野に入っている光など。

 覚醒とは,意識があるということとも重なる。様々な意識状態についての理論がある。(同著17頁)

意識と無意識過程における情報処理の比較

意識研究では,➀局在の問題,②並列性の問題,③バインディング(情報の統合)の問題があるという

 その中で,意識と時間というテーマは,私の臨床で直面している理解しきれない状態を示すクライエントについての視点を拡げてくれる。体験された時間と物理的時間における出来事の生起順序がゆがむことについて,簡単に言うと記憶の中で出来事の順番が変わっていくことが多々あるということはその一例,検討を深めたいと思えた。

 意識のモデルは,この本の出版後4半世紀を超えており,ますます様々なものが提出されていると思われるので,ここでは省略。

意識がなくなることについて

 意識について考えていると,意識がなくなることについても興味が出てくる。
 それも,1つの意識状態と言えるのか。
 その極端な形は,「死」である。

 死ぬと,意識がなくなるとの指摘もあるが,現段階で私はそのことについて「わからない」という立場を取る。そして,「わかりたい」とも思っている。

 個人的には,過去に様々な世界の「死者の書」なども読み漁っていた。これはまたもう一つのテーマ。私が昔に行っていた「祈りの研究」(リンクは,その研究の一部)も,それに連なる部分があるが,方法を間違わないようにしないと,心理学的研究から離れすぎてしまう。

コロナ対策を行っている心理相談室 玉井心理研究室

 玉井心理研究室では,認知行動療法イメージワークを用いて,トラウマから精神疾患,対人関係など広く心理療法を提供しております
 また,個人のみならず,組織における人事・メンタルヘルスコンサルタントとしてもお手伝いをしております。

 コロナ後に拡がったオンラインによる相談ですが,今後も継続する予定です。