トラウマ

肯定・否定的感情の違い 解放と抑制

 ここまで、幾つかの感情について、その存在する意味を解説してきました。改めて見てみると、怒りからさみしさまで、どちらかというと多くの人がネガティブ、と受け止めやすい感情について書いてきています。

  実際に私自身、肯定的感情と否定的感情にはその認識のみならず違いを感じてはいたものの、 今まで私は感情に肯定・否定というものはなく、そのように受け止めているだけである、という説明をすることが多くありました。その理論的理由が理解出来ていなかったからです。ただ、近年のトラウマ研究を中心とした発展で紹介されてきた歴史的な感情研究を学んだとき、いくつも目からうろこが落ちるような学びがあったので、紹介させてもらいたい。単なる不勉強であったことへの懺悔かもしれませんが…。

 肯定的感情と否定的感情、その違いはシンプルです。1977年の「情動の態度理論」の中のニナ・ブルの研究では、高揚感や勝利、及び喜びのパターンなどの肯定的な感情は、抑うつ感や怒り、嫌悪感などの否定的感情と違い、抑制的要素を持たないことを報告しているのです。肯定的な感情は、純粋な行動として体験することができるのです。そして、目標に向かう準備としてのエネルギーと楽観性も伴います。

 一方、否定的感情は「避けよう」「逃げ出そう」とする行動とも繋がっており、現状を体験するのではなく、より安全・安心感のある方向に自分を向かそう、というものなのです。今まで「感情の意味」として書いてきたない様とも重なりますが、否定的感情はそれ自体を体験することを楽しむのではなく、それらは自分の置かれている状況を教えてくれるメッセージとして機能しているのであって、適切な別な方向に自分を向かわせるための感情だというのです。

 ピーター・A・ラヴィーンという優れたトラウマケアの治療者は、その著書の中で、否定的感情は一方は行動を駆り立て、もう一方はその行動を抑制するという葛藤的衝動によって構成されている、とまとめている。だから、否定的感情はそのままに認識することが難しくなりやすいんですね。

 肯定的感情は、自分を素直に目標に向かって走らせて解放させてくれる、否定的感情はそれ自体は意味があるものの、特定の行動に向かおうとする力と抑える力とが葛藤して素直に感じることが難しくなっているんですね。

インナーチャイルドとの対話 3回シリーズ講座のご紹介

幼少時の傷つき体験に対して、「記憶の書き換え」技法は認知行動療法でも特に海外で研究が進み、日本でも少しずつですが認知されてき始めています。

皆さんには、「インナーチャイルドワーク」の方が耳慣れているかもしれません。様々な精神疾患に対して、またより広くは生きづらさを抱える方にとって、傷ついたまま癒された実感のない過去の記憶に対するアプローチは、パワフルな効果をもたらします。

10月から毎月、少しずつですがそのようなインナーチャイルドとの取組みの紹介、その実践に触れて頂き、自分との関係を温かく豊かなものとしていくきっかけとして頂ければと思います。

※3回シリーズで企画していますが、一回ごとの参加も可能です。

【日時】 1日目 令和元年10月28日(月) 午後6時30分~8時(終了)

2日目 令和元年11月25日(月) 午後6時30分〜8時

3日目 令和元年12月16日(月) 午後6時30分〜8時

【会場】 パレット柏ミーティングルーム(各回部屋が異なりますので、ご確認ください)

(千葉県柏市柏1-7-1-301:JR常磐線柏駅より徒歩3分)
【講師】 玉井 仁
【参考図書】 『自分をもっと好きになるノート』(右掲) 2019 日本能率協会マネジメントセンター

インナーチャイルドとの対話