トラウマ

あけましておめでとうございます

 2024年,あけましておめでとうございます。
 様々な状況を抱えながら,何とか年を超えたという方々もおられることと思います。

 私,玉井も皆さんのサポートをできるだけ続けさせていただいているところです。
 昨年末からは,インフルエンザにかかり,ちょうど仕事がないタイミングでよかったです。

心的外傷後成長(PTG:ポスト・トラウマティック・グロウス)

 昨年度は実際に何とか出来ること,出来ないことに翻弄された一年であったという人が沢山言います。

 そこで,1つとても素敵な概念を紹介させていただきます。

 それは,「ポストトラウマティックグロウス」(posttraumatic growth)(以下PTGと略)とよばれているものです。沢山の論文が出ていますが,飯村(2016)を主に,まとめておきたいと思います。
 それは「トラウマティック」な出来事や体験,すなわち心的外傷をもたらすような非常につらく苦しい出来事をきっかけとして,人間としてのこころの成長が進むことを指しています(Tedeschi & Calhoun, 1996)。トラウマを体験することから人が受ける利益として,他にもストレス関連成長(stress-related growth),利益の発見(benefit finding),逆境後の成長(adversarial growth)などと幾つかの概念で語られてきているものがあります。

 人は,良くも悪くもストレスをエネルギーに成長するものだと思うことがあるのですが,トラウマティックな体験は,そこから抜け出すのに沢山のエネルギーを必要とします。
 そして,その課題に取り組んだ方々の成長が著しいのは,過去から語られてきてはいたのですが,近年は特にその部分に焦点を当てた研究も増えてきているのです。

 近年は,複雑性PTSDという概念も疾病分類に出てきています。それは,育ちの過程における体験もその精神疾患,PTSD様の症状を示すことがあるということを指摘しています。

 過去の自分は変えられない,と思うのではなく,その変え難いものにチャレンジすることが,何が変えられる,変えられないの見極めを含め,大きく人間としての成長を促していくのでしょう。

PTGによる成長領域

Tedeschi & Calhoun(1996)は,PTGの成長領域として5領域を示しています。それらは,

 困難な出来事を通じて,他者との関係に肯定的な変化が起こることがある。

 人生に「新たな可能性」を見出すようになる。

 困難な出来事を通じて,自身の強さを自覚するようになることがある。

 心的外傷経験を通じて,精神性的あるいは宗教的な成長を経験する人がいる。

 人生において何が大切であるのか,その優先順位が変わることがある。以前は当たり前だと思っていた家族との時間や他者の存在などについて,感謝の念をもつようになることが報告されている。

 また,Janoff-Bulman(2004)はそれらを更に批判的に検討し直し,以下の3点に絞っている。

 「苦しみを通じた強さ」は,「死なない程度の苦難は,私たちを強くさせる」,「苦難がなければ,得られるものはない(no pain, no gain)」といった信念として見られることが多い。これは上述のTedeschiらの成長領域における「人間としての強さ」,「新たな可能性」に該当する。

 「心的準備性」は,サバイバーたちがもつ想定世界(assumptive world)の変容を表す。この概念は,Tadeschiらとの重複はない。実際に地震被害を経験した人が,それに備えて建物の耐震性をしっかり高めようとする,というのもその一つの例である。

 トラウマ体験後の苦悩やもがきから生じた,実存に関する感謝である。この感謝は,家族や友達(他者との関係)あるいは精神性(宗教性)のような人生における特定の領域が含まれる。一項目❶で示したTedeschiらの成長領域の残りの3項目が,この項目にあたると考えられる。

PTGを促進するために

 PTGを進めるためには,①安全を確保すること,②様々な支援を活用すること,③恥という感情に注意すること,④わかってくれる人を持ち,話せるなら話すこと,➄トラウマ体験を見直すこと,などが大切であると指摘されています。

 ただ,①の安全の確保,これが難しいのは,「危険」を感じる能力が大きくなりすぎて,「安全」を感じる能力が小さくなってしまうからです。「私は安全だよ」とアピールしてくる人でも,危険な人がいるのは言うまでもありません。でも,複数の自分がまぁまぁ信用できる人たちが「まぁいいかもよ」と言っている人なのであれば,すぐに心を開けなくても,少しずつ関係を作ってみてもよいでしょう。

 ③の恥という感情については,私の「7つの感情」でも省略されてしまった章なのです。
 恥に感じることは,出してはいけない,抑え込まないといけない,人に伝えてはいけない,自分の中でも感じてはいけない,と強く抑え込む傾向があります。
 それ故に,人の心の分断化を促進すると考えられます。これは言えない,ということこそ,安全な人にすぐに語るのではなくても,他人事のように「こんなことがあったと聞いたことあるけど,どう思います?」と聞いてみるなど,少しずつ調査をして,自分の中の整理が進みやすくしましょう。

 ➄については,自分の体験の様々な見方を探してみるということです。しばしば,トラウマ体験はあまりにも強烈で視野が狭まるために,様々な視点が抜け落ちてしまっていることがあることが指摘されています。

 玉井心理研究室でも,トラウマ治療にも力を入れています。

 もともと,家族関係,親密な人間関係における傷つきなどを専門に,そして働く人たちの支援へと支援の幅を拡げてきております。
 独立した相談機関ではありますが,精神科医からの紹介などでいらして頂く方もおられます。

 これを書いている途中,能登半島地震が発生しました。

 病みあがりつつの体で飛んでいくこともできず,被災地の皆様の無事を心より祈念しております。

コロナ対策を行っている心理相談室 玉井心理研究室

 玉井心理研究室では,認知行動療法イメージワークを用いて,トラウマから精神疾患,対人関係など広く心理療法を提供しております
 また,個人のみならず,組織における人事・メンタルヘルスコンサルタントとしてもお手伝いをしております。

 コロナ後に拡がったオンラインによる相談ですが,今後も継続する予定です。