心理雑感

欲求を意識せずに行動する訓練 欲求を意識する治療

脳の中での行動

 時々このブログのネタで引っ張ってくる池谷裕二先生の話から、連想していたことを書いてみます。

 池谷先生は脳の研究者なのですが、脳の研究によると、行動したいという“欲求”よりも先に実際の“行動の準備”は始まっているようなです。

どういうことか、考えてみました。

これは、転んだときのことを考えてみれば納得がいきます。

 転んだときには手を出して身を守りますよね。これは、明らかに欲求よりも先に体が本能的な防衛反応で動き始めますね。

 そして、手をだそうとしたところに目が行って、そこにガラスの破片があるのに気が付いてとっさに手をもう少し横に着く、その時にはすでに手を地面につく、という行動の準備にも気が付き、手をつこうとする欲求も意識でき、実際に手をつく、という行動に自分が動くことを許容するのです。

剣道の修行

 この考えが横に広がります。剣道の稽古についてです。
 このところ、コロナの影響でまったく稽古ができず、悲しいことしきりですが…。体がなまってしまう。

 私は、下手な横好きで稽古を続けている人間なので、よく先生に、「下手だなぁ、起こりが見える」と言われてしまいます。

 これは、相手の隙を見つけたときに相手を“打つ”という準備が始まり、「今だ」と考え(つまり打つ欲求を持ち)、それから行動を実行に移す、という随分と沢山の段階が踏まれている、ということになります。

 これでは相手から動きがみえみえで、行動は遅くなるし、相手からするとやりやすい相手、なのですね。

 会心の面が打てた、というときは、打とうとも考えておらず、気が付いたら体が動いて終わっていた、という状況になっていることが多いのです。
 こんな私でも、そんな経験もあるのです。

 かつては先生たちが「打とうとしているのではなく、そのようになるから」ということを訳がわからないことを言うと感じていましたが、まさに意識して“打つ”から離れて行動の準備にられていることが多いからなのかもしれない、と考えました。
 理屈がつながり整理されていくと、とてもすっきりします。

 相手を観て、相手に勝ちたいという欲求を捨て、ただ行動が起こるようにする、そんな訓練ですね。

心理臨床も似たところがあります。

依存症の治療

 更に思考は依存症の治療に飛びます。

 アルコール依存症の人が、お酒を飲みたいという欲求からは自由にはならないけれども、お酒を飲むという行動は自分で選択ができるようになる、ということでもありますね。

 依存症の人が飲むとき人は、意識せずに気が付いたら飲んでいた、ということなのですよね。ほとんど意識せずに飲んでいる、剣道の達人が打とうとせずに打つように。

剣道では、“勝ちたい”という欲求を無くして行動がスムーズにできるようにする訓練、治療では、“飲みたい”という欲求を意識化させて行動を止めるようにする訓練なんですね。

なるほどなぁ。

防衛反応として

 もう少しわかりやすい状況として、説明をしてみましょう。

 剣道の稽古で、初心者は相手が向かってくると手をあげて頭を防御しようとしてしまい、そしてその動作でできる隙を打たれてしまいます。

 行動したくなるけれども、その行動を止めることは練習によってできるようになる、自分のことを守ろうとする動きの準備が自然に怒ることは完全には止めれなくとも、実際にその行動を止める自由はある、ということですね。

 人には自らの意志で行動をする自由があるのではなく、行動をやめる自由な選択肢が与えられているのかもしれませんね。

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