産業心理

ケアされること ケアすること ラインケアに想うこと

ビジネス街

 様々な職種における管理職を対象とする研修は、私にとって楽しみな研修の1つです。同僚や部下のサポートをしないといけない、加えて自分自身も仕事に追われている、そんな忙しい人なか時間を工面して学ぼうとされる皆さん、頭が下がります。

 同僚や部下への支援を提供するのが自然にできている人は、自分も支援されてきたんだなぁと感じていることが多いようです。支援することは自然なことであり、特別なことではない、と感じられるような体験に根差した価値観は、何事にも代えがたいものです。

 過去に先輩や上司からサポートしてもらったから、私もそれに応えて頑張りたいという人も少なくないでしょうが、自分が忙しかったり余裕がなくなる中では、自然にできていたことが自然にできなくなる、ということが生じてしまいます。致し方のないことです。

 私は、ラインケアを大切に取り組んでもらうために、自分のケアをうまくできるようになって欲しいと思い、そのような練習をしてもらうことがよくあります。その過程は、自分の考え方の傾向を知ること、自分の感情との付き合い方を知り、取組むことなどを大切にしています。知識を得たり、相手への理解を深めたり、コミュニケーションスキルを学ぶことも大切ですが、それらは現実的に自分の余裕を作ることに寄与する限りにおいて有効であるのです。

 うがった見方をすると、多くの職場では、余裕がない状況に管理職の人たちを追い込みながら、それでも仕事もラインケアもしっかりと取り組んでもらうことができるように、個人の能力をあげようとしている、ともいえます。それに応えて頑張った人は、その経験と学びを自分のうちに備え、そこで成長して自分の生きる上でのスキルを高め、心豊かな生活を長く続けることができるようになる人も少なくありません。単に、期待に応える「いい人」「できる人」でいることに一生懸命になるだけでは、自分の感情と上手くつき合えないことも少なくありません。

 自分の気持ちをさぐりながら、感情の意味を知り、うまくつきあっていけるようになること。考え方のクセをさぐりながら、そんな自分をいたわりつつ極端にならないように気を付けること。そして、丁寧に自分や人と付き合うことを面倒に感じても、そんな新しいスキルを自分のものとしていっていただきたいと思います。相手のために、ということで役立ったり、その部分が評価されたりもするのですが、それ以上に自分のためになります。

 ラインケア うまいひとこそ セルフケア

働く人、働く組織を支援する

精神分析を創始したフロイトをご存知でしょうか。

彼は、人がよくなすべきことは「愛することと働くこと」と述べています。

近年、その働く人への支援は、従業員支援プログラム(EAP:Employee Assistance Program)の広がりもあり、少しずつ手厚い体制が整えられてきています。またその取り組みは、働く職場に対してどのように働きかけるかという形に広がりを見せてもいます。

実際には人と人の関わり合いのことですから、お互いに大切に向き合えるか、ということに尽きるのですが、それを職場で実践することはなかなか簡単ではありません。家族とは違い、適度な対人距離がある社会のほうが争いは少なそうですが、様々な利害も絡み難しくなりますし、人によってその距離感が違います。個人の価値観やそれを形作る土台となった体験を丁寧にたどり、お互いに腹を割って話しあう時間を取りたくても、業績やノルマのために早く動かなければならない、そんな現実にも追われます。

フロイト自身も対人関係に深く悩み、組織を作りながらも弟子に去られたり国を去らなければならなかったりしました。沢山の悩みがどのように乗り越えられてきているのか、積み上げられてきています。玉井心理研究室でも、その長く産業心理と臨床心理に蓄積された知見で、働く人と働く組織を支援します。

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コメント

  1. やぎ より:

    >ラインケア うまいひとこそ セルフケア
    思わず、座布団を用意したくなりました。

    1. tamablog より:

      ありがとうございます!いただきます!

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