WISC-5の研修から
昨日、玉井は日本でもしばしば使われている知能検査、WISC-5の研修に参加していました。
WISCの話はここではしませんが、講師である某国立大学名誉教授との話で、近年の発達障害の増加について、とても興味深い、でもよく考えると至極もっともで、いくつかのことが整理されたので、少しだけメモとして書いておきます。
最近は、発達障害の診断が出る人も変わらずいますが、それ以上に発達障害の傾向があるものの、診断には至らず凸凹の課題を抱えている例が多いように思います。
今回の話は、そのような例、つまり発達障害を取り巻く話です。
私も、凸凹あるなぁと思います…
発達障害の増加について
発達障害、この診断が過去10年で急激に増えているのはご存じの方も多いでしょう。
発達障害教育推進センターでも、「通級による指導を利用する発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害)のある児童生徒数はいずれも、平成19年度以降、毎年、増加傾向を示しています」と言っています。
発達障害の増加については、医学の進歩と環境要因の両方があり、一つに絞り切れないのは明らかです。
医学の進歩というと、医療ケア児はそのわかりやすい一例です。以前であれば助からなかったような病気を持っている子供が、医療の発展により一定の援助装置などを装着しながら生きながらえられるようになってきており、そのような子供に対しても適切に教育を受けられるようにする体制を作ろう、という文部科学省の通達もありますね。
厳密な細かさ
医学的なことから離れると、心理社会的なことではありますが、最近はいろいろなことが厳密になってきています。そして、主観的な厳密ささえサポートしていこうとする機運も社会にあります。私は、自分も専門家の一人として、そのことを悪いとは言っていませんが、細かくなってきています。
一例ではLGBTQ+などもあげられますでしょう。Qのクエスチョンニグ・クィアは殆ど無限な気がします。生れたときの生物学的性、自分はどちらの性だという認識、恋愛対象を持つ場合、どちらの性に向かうのか、そしてどのような性表現を好むか、ということなどを掛け合わせ、自分にあったものはどれか、を定めていこうとするのですから。
はっきり言うと、人の性は定まらずに揺れるところがある、と思います。年代により、また自分の置かれた環境により…
その揺れを大切にしていくことで、自分の感覚に一番近く、生きやすい状態を社会としても保証していこう、という動き自体はよい面もありますね。
一方、混乱するというデメリットも伴います。
変化には必ずプラス面、マイナス面があり、プラス面が多いからそちらを受け入れる、ということになるのでしょうね。
さて、話がセクシャルマイノリティーの話にずれてしまいましたが、戻しましょう。
ここでのポイントは、細かさ、厳密さ、です。
細かく厳密になると、私などはなかなか対応できないことが多いです。得意なことは細かくてもできますが、苦手なことになると、途端にできなくなってしまいます。
基本ざっくり、というのが私のスタイルなので。
確かに、やたら細かいところも確かに一部はありますが…(笑)
この細かく厳密に、というのが求められると、それが自分の対応できる領域であればよいのですが、そうでない場合には、手に余って問題として浮き上がってしまいます。
この、浮き上がってきているのが発達障害という状態像なのだというのです。
腑に落ちました。
時代が作った病でもあるな、とも思います。
今のIT化、DX化など、細かいですからね…大変です。
優先順位を絞る
学校、社会も、そして家庭でもこの細かく厳密に、というのは大きく影響を及ぼしているように思います。
確かに「ちゃんとする」ということを求めすぎて、一つできたら、まずはそれでよいか、と十分に満足する時間をとって、それが自然になるほどに身につくまで待てない、ということはありますよね。つまりその間は、ほかのこと(本当は他にもあるちゃんとやりたいこと)は、いろいろあるのはわかっているけど、優先順位があるから、まずは大切なことだけ抑えておこう。そしてほかはスルーしてしまおう、というよく言えばおおらか、悪く言えばいいかげんな態度がよしとされないということでもありますね。
どうしても、今の情報化社会の中では、沢山の有益な情報も溢れています。それらはどれも有益に感じるかもしれませんし、あれもこれも担ってしまいます。
だからこそ、やはり絞らないと、何にもならなくなってしまいますよね。
愛情について
少し脱線しますが、愛情についても思考が広がったので、ここでは少しだけ触れておきます。
子どもや家族を愛していることを、親や大人はどのように示すのでしょうね。
以前は、一例として女性の場合には手料理を作る、つまり家事をしっかりやる、ということでその愛情を測ろうとする社会的雰囲気もあったように思います。男性の場合にはしっかり働いて家族のために稼いでくる、ということでしょうかね。それらは、ずいぶんと薄れてきたのではないでしょうか。でも、まだまだ残っているように感じますけどね。
では、スキンシップ?でも、ハグしてあげたくても、思春期の子どもはそれを嫌がることもあるでしょうね。
何に愛情を感じるのか、それこそ人それぞれで正解があるわけではありません。ただ、これでないといけない、と思っていることがあれば、本当にそうなのか、と一呼吸おいて考えてみるのはありかもしれません。あまり何が正解かと考えすぎずに、自分なりに相手に思いを届けられるとよいですね。
インディアンの教え
私の近著『私、合ってますよね?』でも書きましたが、インディアンの子育ての教えがあります。
乳児はしっかり、肌を離すな
幼児は肌を離せ、手を離すな
少年は手を離せ、目を離すな
青年は目を離せ、心を離すな
愛情も、変化していくのですよね。
玉井心理研究室が提供する心理支援
玉井心理研究室では,認知行動療法やイメージワークを用いて,トラウマから精神疾患,対人関係など広く心理療法を提供しております。
また,個人のみならず,組織における人事・メンタルヘルスコンサルタントとしてもお手伝いをしております。