心理雑感

映画「月」 宮沢りえ主演

「月」

 世に問う問題作,とのことで,かつ知人の強い勧めもあり,観にいってきた。

 『「舟を編む」の石井裕也監督が宮沢りえを主演に迎え、実際に起きた障がい者殺傷事件をモチーフにした辺見庸の同名小説を映画化。』と分かりやすい紹介文があった。

 東日本大震災において,悲惨な光景を小説に書こうとし著名作家(宮沢りえ)が,頑張っている人を応援するための本にするために,綺麗な部分のみを描き出していこう,という出版社の意向を受けて書いたが,その後文章が書けなくなってしまっていた。

 本当のコトから目をそらしたからであろうか。

 障がい者施設で働き始めた宮沢りえは,そこで働く他の人たち,そこに住む人たちに出会っていく。

 そこに住む人たちは,家族の元では暮らすことができない障がい者たち。
 家族の中には,その障がい者の子どもを大切に思いながらも,一緒に暮らせない人もいることになっている。多分,家族から捨てられたような人もいる。

 その施設は,ある意味,社会から障がい者を隠すために存在している。
 「ここは誰もが平等で,笑顔があふれるところです」という耳ざわりのよい言葉に隠されている。

 そして,真実を隠すというそのコトから,自らの心が揺れていく人たちがいる。

自分自身に問われること

 多分,この映画は「楽しかった」といった感想はもらえないであろう。
 宮沢りえオダギリジョー,その他俳優たちの演技が真に迫ってくる。

 そして,自分の中で,同じ生きている人として他者を大切に感じているだろうか。
その人とどのように関わっているだろうか,ということを考え,自分に問うことになるであろう。

 自分の限界を見つめることにもなるかもしれない。

 自分の人との距離感や関係性が分かりやすく見えてきてしまうかもしれない。

 自分があまり認めたくないことを突き付けられるように感じる人もいるであろう。

 湧き上がる記憶に囚われてしまう人もいるかもしれない。

 生きとし生けるもののすべてが等しき存在としてあるということを信じながらも,自分との関係の深さにより,優先するものが生じつのも人の常である。
 単純接触効果などは,まさにそのことを示していますしね。

 その様なコトからも,人は逃れられない。

 それも真実。

 自分の考えを心の中でしっかりと持つことは,有益かもしれない。
 ただ,それを必ずしもオープンにする必要はないであろう。
 安全な人と場で,お互いのことを語り合えるのであれば,それは素敵なことかもしれないが,なかなか緊張するモノでもある。
 心理療法の中で,ときにその緊張することに出会う。

 詳しくは,ホームページや予告編もあるし,最後はご自身で見たほうが良いでしょう。

コロナ対策を行っている心理相談室 玉井心理研究室

 玉井心理研究室では,認知行動療法イメージワークを用いて,トラウマから精神疾患,対人関係など広く心理療法を提供しております
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