心理雑感

映画『今ダンスをするのは誰だ』 観想記!

今ダンスをするのは誰だ

 この映画は,パーキンソン病当事者の仕事、人生、家族をリアルに描く,古新舜監督の最新作です。主演は,「水曜どうでしょう」のテーマソング「1/6の夢旅人2002」や、「第51回 日本レコード大賞」優秀作品賞(2009年)を受賞した「手紙~親愛なる子供たちへ~」で知られるシンガーソングライターの樋口了一が初挑戦しています。樋口氏は,ご自身もパーキンソン病に罹っており,撮影もその症状の合間に,そして症状自体が演技ではなくまさに本当の症状を撮っていったリアルなものです。

 パーキンソン病になった知人から紹介され,家族と観に行きました。新宿のK‘sシネマで公開しています。席数84の小さな映画館,つまりミニシアターですが,インディーズ映画の聖地とも言われ,いろいろなテーマを深掘りした映画を流しているところですね。2018年には,『カメラを止めるな』(上田慎一郎監督)の最初の上映館でもあり,そこから火が付いています。

 私が観に行った日は映画が終わったところで,監督と俳優の方があいさつに立たれました。ラッキーでした!オレンジ色の服に包まれた監督には,その熱さとともに4年をかけて撮影してきたエピソードを少し伺いました。

 映画公開一週間で,この小さな映画館で1000人を超え,毎回満員で推移しているとのこと。
 監督も,パーキンソン病で苦しむ知人と話す中で,この病気について広く知ってもらうためにも映画作りに取り組んだとのこと。

 私,玉井も最初に行こうと思った日には既に予約が取れず,他の日程で予約を取り直して行ってきました。

映画

 映画の内容は,実際に見てもらうのが良いでしょうね。

 それぞれの演者の出来不出来についての意見は,様々あると思います。うまいなぁと思うもの,今一つというものもあります。ストーリーは,結構直接的であまり深読みしないでもわかるようなものになっていますね。深読みしたいかた,謎に取り組みたいかた,複数の伏線があるのを好む方などは分かりやすぎる,という方もいるかもしれません。

 私にとって,この映画の一番の見どころは,主人公の変化でしたね。

 パーキンソン病を受け止められず,怯えて家族や職場の部下たちに攻撃的になってしまう,ご自身の夢がかなわなかったことから子どもに過剰に期待しプレッシャーをかけてしまう主人公が,人との出会いを通して変化していきます。

 自分の弱さを認め,あきらめることをあきらめ,自分の子どもにも向き合おうとする姿は,感動的です。

ありのままの自分

 主人公は,過去の経験から自分や人に対して「こうあるべきだ」「子どもはしっかり勉強して将来に備えるべき」「問題は人に頼らず解決すべき」といった強い要請を持っています。過去にカメラマンになれなかった想いを抱え,「人になめられないように頑張らないといけない」という囚われから自由に慣れず,職場の人との信頼関係を築けず,家族に対しても高圧的な態度を取っていました。
 医者に掴みかかったり,リハビリに行っても全く実施しなかったりと,結構困った人でした。

 子どもを叩いたことを機に奥さんにも出ていかれ,「子どもの100倍も世話するのが大変」と言われていました。

 そんな主人公は,憧れのプロカメラマンになりすまし,嘘をついていい気分になるのですが,その嘘が本人にばれてしまいます。その憧れのプロカメラマンに許される体験から,少しずつ心を開いていきます。その後は,人に対する態度を変えていき,子どもに向き合うためにも新しくダンスに挑戦します。

 逃げずに取り組む姿,弱くても素の自分でぶつかっていこうとする姿に,結構感動しました。
 機会があれば,是非ご覧ください。

コロナ対策を行っている心理相談室 玉井心理研究室

 玉井心理研究室では,認知行動療法イメージワークを用いて,トラウマから精神疾患,対人関係など広く心理療法を提供しております
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 コロナ後に拡がったオンラインによる相談ですが,今後も継続する予定です。