心理雑感

『精神の考古学』中沢新一著 これは,おススメだ

2024 ゴールデンウィーク

 今年,2024年のゴールデンウィークは,まさにお宝との出会いです。
 中沢新一による『精神の考古学』,これは名著であるというか,精神・心の深みを探求する人にとって重要な書籍となろう。

 以前より,『チベットの生と死の書』を愛読し,最近も毎日少しずつ読み返していたのだが,もっと深くゾクチェンについての知識を得たくて,調べていたところであった本でした。

 精神のアフリカ的段階,それは人間になってその初期の,人の心の広大さをそのままに感じようとする意識と取り組みであろう。
 それを経て,勤勉でかっちりとしたアジア的段階へと進む。

 人の心の無限の広さ,それは無限というものがまさに底なしの無限であるということ,そしてその限界は到底知りえないということ,その無限の空な空間に自らを投げ捨てられるようになる,そんなゾクチェンの教えと実践が,丁寧に書かれています。

 そして,時間についての記述も,大変に刺激を受けた。
 知識が一旦捨てられて,戻ってくるということは下に書いたのだが,それは,過去・現在・未来という歴史的時間軸を離れ,時間を超越する神話的時間軸を経ることで,新たな力がみなぎるということでもあろう。

インナーチャイルド

 かつて,私が行っていた研究で,インナーチャイルドについてのものがある。
 それも,人の発生の初期の投影であるとも言えよう。

 インナーチャイルドの研究において,自ずから湧き上がってくるようなイメージについて考察したのだが,それはまさにそのような神話的時間を経て湧き上がってくるのかもしれない。

 そして,人はそれに癒されるのであろう。

カルロス・カスタネダ ドン・ファン

 実は,この本を読みながら,カルロス・カスタネダのインディアン文化の人類学的実践の本を思い起こしていた。
 凄く通じるところがある。

 あれも,やはりアフリカ的段階なのであろう。
 と思っていたら,この本でも触れられていて,納得感増大。
 インディアンも,それを感じて実践していたのであろう。
 その様な取り組みは,世界中でその片鱗を残している。

 片鱗と言うと,少し寂しい気もするが,改めてこの本を読み,それらの知識が一旦は途切れ,再発見されることで新しい息吹と共に生き返る,その力強い働きを実感した。

 少し近代的ではあるが,過日書いた「死は存在しない」(田坂広志著)とも繋がる部分がある。

剣道とアフリカ的段階

 少し飛躍した論理に思えるだろうが,私の頭の中で繋がったので,メモとしても書いておきたい。

 私は,下手の横好きで長く剣道を修行してるのだが,最近は小川忠太郎先生という剣禅一如を探求した人の本を読み進めている。

 特に「百日稽古」は読みごたえがある。

 剣道も,意識から離れ,自然と身体が動くこと,そして生と死のはざまに立とうとすることを本来の面目とする。
 それ故,剣道の理念は,「剣道は剣の理法の修練による人間形成の道である」となっている。

 人は,生まれながらにして本当の人となるのではない。

 鳥は,この世に生まれて,2回生まれるという。
 まずは,卵として生を受け,更に殻を破るときに成熟した形を備えて生まれ直すのである。

 人間も,同様なのであろう。
 ただ,2回目の誕生がうまく成し遂げられていないことが多いのだろうと思われる。

 この2回目の誕生は,「大人」になるということでもあろう。
 古より,大人になる儀式,イニシエーションが多くなされてきたのも,その為であろう。

大人になるということ

 ぐるっと回って,心理学に戻ってきた。
 人は以下にして成長するのか,それは言い換えれば,苦難を乗り越えるのか,ということでもあろう。

 それは,臨床心理学が探求する心の平穏への道,ということでもあろう。

 改めて,精神疾患とこの理論,さらには実践が心の平安に繋がる方法について,考察を深めてみたい。

 今回は,大変に有益と感じられた著書,「精神の考古学」の紹介でした。
 このブログでは,その広い知識と経験に基づいた言葉について,説明しきれません。
 ご覧いただきありがとうございました。

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