アサーションとは
この言葉、知っていますか?
日本語では、「自己表現」「自己主張」などと訳されています。
アサーションについては、認知行動療法に限らず多くの心理療法の中で有効なスキルであるということで、既にこのブログでも紹介していたのかと思っていましたが、どうも書いていなかったらしい。
現在、ホームページの内容を整備しようとしており、その一環としてここに書いてみます。
アサーションとは、適切に自己主張をするためのコミュニケーションスキルのことであり、1950年代にアメリカで一つのカウンセリング技法として開発されたものです。
適切な自己主張とは、自分のことを大切にしながら、同時に相手のことも大切にするような表現をする、ということですね。
実際に、私も相談の中で使用したり、来談される方と一緒に練習したり、研修などで多くの人たちと共有していくこともあります。
3つのアサーションのスタイル
アサーション・トレーニングでは、コミュニケーションのあり方によって、3つのスタイルに分けて考えていきます。
➀アグレッシブ(攻撃的)タイプ
コミュニケーションを進める場面で相手に対して攻撃的であり、相手の主張を受け入れず、自分の主張を通そうと我を張ります。
何かお願いされたときにも、「無理です」と紋切り型に言うので、相手を嫌な気持ちにしてしまいます。
本当は、これ以上は本当に無理、という状況であったとしても、表現の仕方で損をしてしまっているタイプです。
自分の意見を主張できることは良い側面ですが、相手より優位に立とうという意識があったり、相手を操作しよう、というような傾向がある場合には人間関係もうまくいきにくいでしょう。
②ノンアサーティブ(非主張的)タイプ
お願いされたときに、基本的に断ることができずに、「はい」「わかりました」という返答をしてしまいます。
実際に、自分がそのお願いを受けられると感じているのであればよいのですけど、「ちょっと無理だなぁ」「それは嫌だなぁ」と感じていても、その気持ちを伝えると相手に悪いかな、自分がどのように思われるかな、などと気になってしまうので、断れないのです。
相手に、「私はこれだけ頑張っているのだから、わかってほしいな」と期待していても、それを相手に伝えられていませんから、相手が楽観的な人であったりすると、「大変そうだけれど、頑張って調整してくれんだな、ありがたいな」と素直に感謝されている、その裏で自分は涙を流す…なんてことになりかねません。
素直な頑張り屋という良い面もあるのですが、自分の考えていることを伝えられることができないのは、「あなたは何を感じているの?」となり、無責任な人と見られることもあります。
自分自身で、本当に何を感じているのかわからず、伝えようとして一生懸命説明しても、相手からするとその言い訳がよくわからず、相手を苛立たせる、という悪循環に陥っている人もよく見かけます。
③アサーティブタイプ
アサーション・トレーニングで理想とされる、自他を尊重したコミュニケーションができているスタイルです。
自分の気持ちを理解しており、それをうまく相手に伝える表現力があり、そのうえで相手と一緒に話し合って問題解決に向けて調整していく、という柔軟性を持てているのです。
そこでは、自分から相手に働きかけるスキルと、相手からの働きかけに応じるスキルがあるのです。
➀のアグレッシブタイプと②のノンアサーティブタイプの良いところを合わせた形ともいえるでしょうか。
あなたのタイプは?
あなたがとても疲れている時に、久々に会った家族/友達/恋人に「話を聞いてよ」と言われました。最初は少しだけかな、と思って聞き始めましたが、1時間を超えても終わりそうもなく、戸惑いを感じつつあります。
A 「もう疲れているんだけど、わからないかな」
B 「色々大変だね。もっと聞きたいんだけど、ちょっと私も今日は疲れているから、続きは今度でいいかな。元気になったら、あなたの話もしっかり聞いて、コメントもしてあげられるとも思うんだけど」
C 「…」(ひたすら相手が止まるまで聞く)
いかがでしょうか。ABCのどれがどのタイプか、すぐにわかりますでしょうか。
そして、あなたはどのような選択肢を取ることが多いでしょうか。
コミュニケーションはスキルです
コミュニケーションのスタイルは性格だから変えられない、と思う人も終われるようですが、そうとも言えませんね。
芸能人など、素の時には静かでもカメラの前では明るく元気、という人もいます。そのような“振る舞い”のスキルを身につけているのです。
皆さんの周りにも、あの人のあのいい方はうまいなぁと思うような表現をサラッとされる人がいるでしょう。そんな人をモデルに、まねしていくのです。
アサーションのステップ
長くなるので詳細は省きますが、アサーションのステップには以下のような部分が含まれています。
➀主張する価値があるか自問する。
②タイミングに注意を払い、適切なタイミングを心掛ける。
③「私メッセージ」を使う。(※主語を「私」とするのです)
④肯定的にいう。
➄具体的に言う。
⑥依頼の言葉の基本型は、「感情+説明(理由)+依頼内容+(肯定的効果)」
⑦断りの言葉の基本型は、「謝罪(感謝)+説明(理由)+断り表現+代替案」
⑧笑顔など非言語的表現を大切にする。
⑨聴くスキルを使う。
自分の言っていることと、他の人の言っていることは変わらない。それでも相手の話が必ず採用されている、これは大概表現するスキルの差によります。
家族などの身近なところでは、面倒になってしまうかもしれませんが、そこでの練習はより深い関係を築くのに役立つでしょう。
仕事など社会生活の中では、必要に駆られて練習する、ということもあるかもしれません。
外ではできるけど、内ではできないというように訴える人も少なくありません。これは、社交力のある人、ちょっとネガティブな要素も含めると、外面が良い人、ということですね。
人は感情で動くものですから、それを許し合える関係を育てられるとよいのですが、その基礎固めのためにも練習していきたいですね。
まずは、「ありがとう」と「ごめんなさい」、そして「こんにちは」からですね。
子供っぽいと思うでしょうけど、こうした基本を丁寧にできるだけで、随分と変わりますからね。
挨拶ができる=アサーション、ではないけれども…。
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