先日,仲間との勉強会で私の著書,『7つの感情』から「罪悪感」について話し合いました。
罪悪感という感情があると,だんだんと自分が小さくなってしまい,行動範囲も狭まってしまうなど難しいよね,といった話もありました。
悪いことをしていた
子供の頃の話になりました。
「子供の頃,結構いたずらとかしていたよね」
「してた,してた,というか,それしかしていなかった」
「ピンポンダッシュとか」
(他沢山…)
子供の頃のいたずらや悪さは,罪悪感というよりも「怖いもの見たさ」のようでもあったかな,という話しが出てきます。
・確かに悪いとは思っていたけど,それをすると実際にどうなるのかなということだった。
それは,これから漕ぎ出ていく社会に対する理解を深めるための練習,実験ともいえる行動かもしれませんね。
・悪いというよりも,相手を困らせたり,びっくりさせるのを楽しんでいた。怖いもの見たさ,という面もあったかもしれない。
それは,罪悪感というよりも,恐怖,言い換えるとスリルを楽しんでいたとも言えそうですね。
一寸横道 怒りのコントロールの話
怒られたけれども,受け止められ方,怒られ方によりすごく行動が変わった,という話です。
ある方は小さいころとても怒りんぼだったそうです。
すぐにイラっとしてケンカしては手が出ていたのだけど,小学校の後半である先生(怖い先生ではあった)が,
「ケンカしそうになったら,一日待て。一日おいてもケンカしたいという気持ちがあったら,そのケンカを俺は許す」
と言われて以来,手が出るようなケンカをしたのは一回だけ,とおっしゃっていました。
これは,罪悪感とは違い,怒りという感情との付き合い方が先生からの支援で大きく変えられたという例でしたが,素敵な事例だったので,紹介です。
感情を認める,耐える力をつける,感情を感じているその人を認めて応援しているなどと,様々なメッセージが感じられます。
その人曰く,「怖かったけど,筋を通す先生だったから」ということでした。
感情に適切に耐える力がどのようにつくのか,これは重要ですね。
感情に突き動かされた行動が維持される仕組み
感情的な行動を,「感情駆動行動」と呼びますが,強い感情だとこの行動も強く促されます。
その仕組みを行動理論で考えると,感情の後に引き続く行動によって,その感情から解放される,というご褒美があればあるほど,その感情駆動行動は維持され,強化され続けるとも言えます。
例えば,先の方ではありませんが,怒ったらすぐに相手に殴り掛かる,という人がいます。その人は,相手を殴ると「すっきりする(つまり楽になる)」という条件付けができていると言えます。そして,相手を殴らないとすっきりしない,それどころか,相手を殴るとすっきりする,という間違った学習が進み,定着してしまっているとも言えます。
それ故に,その仕組み(感情と行動の連合)を理解したうえで,少し時間をおいて,その上でもどうしても殴りたくて,相手も許してくれたら殴る,という形にすると,その学習が解除されると思われます。
よく,イラっとした感情が高まったら,まずはそこを離れよう,というようなタイムアウトというアプローチが有効だと言われますが,まさにそれはこの仕組みを使っているとも言えますね。
罪悪感を適切に持てるようになるステップ
話を罪悪感に戻しますね。
子供の頃,悪さばかりしていた,という話しです。
これは,罪悪感を感じなくなる練習をしていたのか,といった意見も出ました。
子どもの頃のいたずらは,「昔はいたずらしたな。いろんな人に迷惑をかけたな」と成長して反省するためにあるのかな。そして自分が大人になった今,人のいたずらに「前は自分もいろいろやってきたからな」と,注意はするけど,あまり細かく目くじら立てずに許してあげることができるのかな,と話し合いました。
昔,人と仲良くなるには,一緒に悪いことをするのが一番だ,という話を聞きました。
青少年たちがいたずらをすること,ちょっと悪いことをすることは,仲間づくりでもあるのでしょうね。そして,大人になったときに優しくなるために役立つ,という人もいるのでしょう。
「ルールは破るためにある」なんてことを聞いたこともありますが,ルールを適度に守り,柔軟に運用することは大切でしょう。あまり杓子定規になりすぎると,四角四面で硬くなりすぎてしまいます。
その柔軟さを身につけるために,少しはみだす経験は役立つのですね。自分の正しさだけを主張し続けるという姿勢は,対話を妨げますよね。
あやまること ゆるすこと
『7つの感情』にも少し書きましたが,人は失敗するものですよね。そして,失敗して相手に迷惑をかけたなら,ごめんなさいとあやまることが大切です。
その後も相手との関係が維持される場合には,ごめんなさいされた方もゆるせる場合にはそれができたほうがよいでしょう。この,謝罪と許容は,セットで大切な能力になるのです。
ただ気を付けてくださいね。これは,何事も許さないといけないということを言っているのではありません。
簡単に許すことができないことは,誰にもあるものです。
罪悪感は適切な強さで持つべし
既に過去からも書いてきていることなのですが,罪悪感は過剰に感じすぎないように注意することが必要です。
人により,相手に罪悪感を強く感じさせるのが得意な人がいます。
多くのことは,10対0で一方だけが悪いということはありません。
過去の体験から,例えば親から「あんたのせいで…」なんて言われ続けた体験がある人は,自分が悪くなくても,何かトラブルがあるたびに「私のせいかな」と重く罪悪感を強く持つ傾向があります。
自分が悪いな,と感じたときには,自分が悪いところ,自分が悪いとは言えないところ,50対50ぐらいで考えて,検討してみてください。
感情との付き合いも,継続することでうまくなります。
丁寧に進めてください。
玉井心理研究室が提供する心理支援
玉井心理研究室では,認知行動療法やイメージワークを用いて,トラウマから精神疾患,対人関係など広く心理療法を提供しております。
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