心理雑感

「死は存在しない」田坂広志著 より

「死は存在しない」(光文社新書)

 田坂氏の著書,「死は存在しない」に目を通してみた。
 田坂氏は,元々原子力の研究者で,海外でも活躍をされた方らしい(同書による)。
 そしてその後,科学者に時折あることだが,生命や自然科学の領域での活動や思索を深めておられるようです。
 かつて,筑波大学名誉教授の村上和夫先生も,元々は遺伝学などの専門家でしたが,晩年はサムシンググレートといった概念を強く表現しておられました。
 そのようなことを決して悪いと言っているのではなく,そのような科学的に言い表しきれない領域について関心を持つのはもっともなことだと思うし,それを何とか言葉にしようと努力され,かつその社会的立場により多くの人の耳を傾けることも自然なことだと思われる。

ゼロ・ポイント・フィールド仮説

 ゼロ・ポイント・フィールド仮説とは,全ての空間にそれぞれ波動として記憶が蓄積されている,それは光子が波動と粒子の両方の機能を持つことが物理学の領域で明らかにされているように,自明に導き出さることだとしている。詳細は省略する。
 ま,その説の真贋はともかく,誰が言い出したのかと思って調べると,まさに田坂氏であった。

 村上先生よりも,もう少し,生命について科学的に迫ろうとして説明を試みているのがよくわかる

ユング’(C.G.Jung)のセルフ

 そして,私のような臨床心理学の人間としては,このような発想はフロイトと共に深層心理学,無意識を探求したユングが提唱した『セルフ』という概念と重なるようにも感じられる。

 Jung派によれば人にとり,自我は無意識が生み出した一つの適応的な機能であり,そして脳の発達とともにその自我が人の「ご主人さま」のように誤解をさせるようになっているというのである。

 しかし,確かにゆったり呼吸を感じたり,「自分が…」という考えから離れられた後に,力が抜けてより自分の楽な力が出せるように感じられる,そんなことがあるのも確か。
 私個人としては,納得感が高い。
 私自身,身体感覚で確かめるという要素が大きい人間なので。

 正確にというよりも,記憶が波のように蓄積されて,現在及び未来にも影響を与えている,という発想は,説明として理解しやすいところもある。

 いずれにせよ,自我を手放すことで「私が」という執着を減らし,無意識に触れることでそれが持つ癒しの力に触れられる可能性を高める,ということは私の臨床経験からも,実体験からも納得がいくところではある。

 いろいろと書こうと思ったけれども,この田坂氏の話は,いろんな人が,怪しいのも含めて拡げておられるので,関心がある方は検索してみては良いかと思います。

コロナ対策を行っている心理相談室 玉井心理研究室

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