音楽

音楽について考える➀

留学を決意した理由

 前回まで、ウィーンで学んだ音楽について書かせて頂きました。
 ウィーンに留学していたなんて言うと、かなりのピアノの達人で、ピアニストとして更に腕を磨き、それで食べていくという決意を持って海を渡ったんだと思われがちですが、私の場合はちょっと違います。
 私は大学は日本の音楽科に通いましたが、卒業したら音楽に関係ない仕事をするか、音楽に関係する仕事をするとしても果たして何をすれば良いか、途方に暮れておりました。
 そんな時、お友達と初めての海外旅行のツアーに参加しました。ドイツとオーストリアの旅です。

ドイツのホテルでの出来事

 ドイツの随一の観光名所、ノイシュバンシュタイン城のある町、ヒュッセンのホテルに泊まっていた時のことです。
 夕食をツアーのみんなと一緒に頂いていた時、そのホテルのオーナーがピアノを弾いてくれました。
 とても気さくな初老の男性で楽しい雰囲気になったので、私も弾かせてもらっていいか聞くと、大変快く弾かせて頂けました。
 実はその時とっさに弾ける曲が無く、かなり前に弾いていたシューマン作曲の「飛翔」という曲を弾いたのを覚えています。
 旅行中でしたのでもちろん何日も練習してなくて、もし日本のピアノの先生が聞いたら絶対怒るような演奏だったと思います。

 私は誰かに演奏を聞いてもらったら、怒られたり批判されたりする準備を無意識のうちにしてしまうのですが、その時はそのオーナーから大絶賛を受け本当にびっくりしました。
 「何年くらいピアノを習っているの?どんな練習をしたらそんな演奏ができるの?」と、半ば涙ぐみながら質問されて、お礼に、と、地元でとれたはちみつをプレゼントしてくれ、私の演奏でこうやって誰かが喜ぶことがあるという事実に心底衝撃を受けました。

 その日は興奮してなかなか寝付けませんでした。
 音楽をする意味が初めて分かった気がして、興奮していました。
 音楽は本来、それを聞く人が癒されたり慰められたり元気をもらったり、何かしらの形で感動をするのがあるべき姿なんだな、とその時初めて感じました。
 そして演奏する側も、聞いてくれる人が少しでも何かを感じてくれる演奏ができるように努力する、そしてその努力によってまた演奏者も癒されたり元気をもらったりするのではないか。

音楽とは辛いもの・・・ではないのかも?

 それまで私は、とにかくレッスンで叱られないように、本番で失敗しないように、常に何かに追い立てられている感じでピアノに向き合ってきました。
 レッスンでは毎回のように怒鳴られ殴られ、そのことで親からも呆れられ、本番では批判され他人と比べられてきました。
 大学に入ってからの先生は、「人前で弾くのは恥ずかしいことだから」という理由で、発表会も門下生のみの非公開、外部の演奏会に出演するのも「大学の名前が出るんだから、もっと上手な人じゃないと恥ずかしい」と言って許してもらえませんでした。

 ただひたすら練習してレッスンを受けて曲が仕上がったら終わり・・・やっぱりそれじゃいけないんじゃないか。
 子供の時から厳しいレッスンに耐え、色んな楽しいことを犠牲にして長時間練習したのは、一体何のためだったのか。
 クラシック音楽が世界中の人に愛され演奏されるのは何故なのか、そしてそのクラシック音楽が産まれたヨーロッパでは、音楽はどのような存在なのか、それをこの目で確認せずに、音楽を続けるか止めるか決められない。

そう思って、留学を決意したのでした。

いろんなことがきっかけで,人は新しい選択肢に踏み出す勇気を持てますね。
音楽を通して人の心に触れる,それもなかなか楽なことではないですし,開きたくないと力んでいる人を開くこともできない,そんなほんわりとした力しかなくても,そのことにエネルギーを注いで取り組むこと,そのこと自体に意味を見出せるのも力ですね。

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