怒りの観察
続きです。
Aさん(40代 女性)が“怒り”に取り組み始めて,怒りに突き動かされるだけではなく,怒りを受け止められるようになってきてから,感じている“怒り”を検討することもできるようになっていったといいます。
認知行動療法でいう,セルフモニタリングがうまくなっていった,ということですね。
「怒りというボールを受け止められるようになってきてからは,そのボールがどのようなものか,その状況に適したものか,観察できるようになって来ました」というAさん。
それ以前は,“怒り”という感情が生じた時,更にはその感情を何とかしようとしているのに,何とも出来ないのではないかと苦しんでいる時,その“怒り”は理不尽なものであり,その“怒り”に苦しんでいる自分は被害者だと考えていました。そして,被害者の自分の訴えは誰もが受け止めてくれて当然である,と考えて,怒りという火に油を注いでいたといいます。
対処方法を知らなかったのですから,仕方がありませんよね。
怒りの暴走
Aさんは,自分の怒りが,いかに理不尽に暴走していたのかを振り返ります。
当時も,その怒りがもともとは親に対して向いていたものであることは分かってきていた,といいます。つまり,この“怒り”に振り回されていたときの自分の“怒り”は,その状況に適したものではないことが殆どであったとのことです。怒りは,過去の“嫌”という思いが今の状況に出てきてしまっているのですから,自分自身でも混乱しますよね。そして,その混乱は「自分はおかしい」といった考えに繋がり,自己否定や自己破壊に向かってしまうのです。
Aさんは,怒りがいかに子供が転んで泣いていた時のことを思い出すといいます。当時,子供はまだ小学校にも入っていませんでした。気分が良く,子供と一緒に出かけている途中,子供が転んで泣いてしまったことがありました。それ自体は仕方の無いことと思い,「気をつけるんだよ」と軽く言ってあげられたのです。そこまでは良かったのに,なかなか泣き止むことの出来なかった子供に苛立ち始め,「大丈夫だよ」「もういいでしょ」「泣き止みなさい」「いい加減にしろ」と最後には怒鳴りつけるまでに,さほど時間はかからなかったとのことです。
今であれば,「もういいでしょ」より強い怒りのボールを投げつけるのは,逆に泣かしてしまうこと,その状況に適していなかったとわかりますし,そのようなスキルを持てるようになった,とも言います。
「思い通りにならない」不快さに耐えられず,不快にしてくること全てに対して怒りを向けてしまっていた。その状況に適しているかどうかではなく,不快であるか/ないかで,不快である場合には全て激しい怒りの対象となってしまっていたのです。
何歳の振る舞い?
ある時,「思い通りにならない」から怒るのは,何歳ぐらいの行動だろうか,とカウンセラーと話し合ったと言います。「どう考えても,子供っぽいと思った」
嫌いな毛虫を投げつけられたら,一瞬で嫌悪感で一杯になり,大騒ぎする人がいます。それは,決して不自然なものではないかもしれませんが,大人であれば,瞬間的には驚いても,すぐに周りの人の反応も意識して,さっと手で払って大騒ぎまではしないように調整できる人達は多いものです。『嫌いな毛虫』と『思い通りにならない不快さ』が同じなのは,ちょっとひどすぎた,とAさんは今では思えるようになっているとのこと。
続きます…。
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