怒りとrichに親しむ
前回のブログの続きです。
Aさん(30代 女性)は,大学時代から自分が怒りのコントロールが本当に出来ないことを自覚し始めました。子供の頃には,思い通りにならないと迫ってくる親に圧倒されていました。高校時代には,親のことが嫌だという自覚を持つようになり,出来る限り距離をおこうとしていたといいます。ただ,親に対して怒りを向けるなんてことは,怖くてとても出来なかったのです。
親は,今の時代で言うと,毒親だと思えます。
Aさんは怒りのコントロールの取組み(アンガー・マネジメント)を進めていきました。それらは,ざっくりと
①怒りを理解すること,
②怒りに気づくこと,
③怒りに突き動かされて行動してしまわないこと,
④怒りという感情を受け止められるようになること,
➄最終的には怒りを感じることを恐れて自分の行動を不適切なまでに制限しないで生活できるようになること,
などを含んでおり,Aさんは丁寧に学びを深め,継続していきました。
それは,最初は果てしなく終わりのない旅に出たような気分であったといいます。ただ,担当のカウンセラーと一緒に取組みを続けているうちに,そして仲間の取組みを見ているうちに,少しずつ成長している自分に気がつきました。
担当カウンセラーが,野球好きなAさんによく言っていたことがあります。
「時速150キロの速球を,ミット(グローブ)もなしで,キャッチボールも殆どしたことがない人が受けろっていうのは,無理でしょ。そんなことをしようとしても,体で球を受けろってことで,殆どサンドバッグ状態になって参ってしまうよね。ちゃんと怒りという感情について理解をすること,それがミットをつけることになるし,怒りの強さによってどのように対応するのかを決め,それに沿って日々を送り,実地練習することが少しずつ様々なスピードの球に慣れながら,ミットを使うことになれ,勢いを和らげることがうまくなる,そのような筋肉,怒りを受け止める心の筋肉をつけていくことになるよね。ちょっとずつ,鍛えて行こう」と。
怒りという感情が出てくる,つまりどこからか球がAさんに向かって飛んでくるということ,それに対応できるようにする。そのことにAさんは必至に取り組んまれました。
球のスピードが弱いときには,気分転換をしよう。中くらいの時には,怒りの強さが現実的に妥当かどうかを検討しよう。早い時には,まずはひたすらにその場から逃げ出そう,というのがざっくりとした方針だったようです。怒りが全くないのを0点として,Maxを10点として,普段からその強さ,つまりは球のスピードを測定するように意識されました。
工夫をしながらも,日々の取り組みが嫌になる時もあり,何で私がこんなことをしなきゃいけないのか,親のせいじゃないか,と思うことも多かったと言います。でも,親が何とかしてくれるはずがない。また,人に八つ当たりしていても仕方がないことにも気がついてきていていました。実際に,怒らないことが楽だと感じ始められたし,そうやって自らを励まし,励まされながら取組みを続けられたと言います。
少しずつ,怒りの速球を,ちゃんとミットでつかめるようになったというAさん。苛立った時に,「やばい」と気がついて,エスカレートしないようにその場から離れるのもしばしばだったと言います。「前は,怒りを理解するどころか,怒りに飲み込まれていた」
山あり谷あり,取組みは決して順調に進んだだけではなかったけど,キャッチボール自体が楽しくなっていったといいます。このキャッチボールは,人との関係もありましたが,それ以上に自分とのコミュニケーションだったのです。
続きます…。
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