今回は,昔にあるサイトで書いていたものを,修正してアップしたいと思います。事例は,あくまでも想像上の事例で実際のものとは異なりますが,参考にしていただけるところはあると思います。
怒りという感情によって守られるもの
Aさん(40代 女性)は、過去を振り返り、「よくやってこれたよな」と思うことがあります。10年前には、医療機関で境界性パーソナリティ障害と診断されたこともあります。治療が思ったように進まず,治療機関を転々として訳が分からない時間を長く過ごしました。
そんな苦しい中,自暴自棄になり,それも症状であったと今は思うけれども,自分や人を傷つけてしまったことも数え切れなくあります。
境界性パーソナリティ障害(BPD)とは,感情のジェットコースターに乗っているような病気で,ここでは詳しい説明はしませんが(下線部をクリックしてもらうと,説明した過去のブログやHPにリンクしています),状況が受け入れられず(人に見捨てられないためになりふり構わない行動に走り),人に対して適切なコミュニケーションを維持することが出来ず(感情的に攻撃したり、脅したりしてしまい),つらいことに耐えられず(苦しい時にはすぐに何とかしてもらおうとして,何とかしないと許せないとつめよったり,死んでしまおうと思ったり),自らの感情を調整する心の筋肉が育っていない病気なのです。
ボーダーラインやボーダー、更にはBPDと呼ばれることもあります。
Aさん,まさにこの説明のとおり,大変な時代を通り過ぎてきました。振り返ってみると,表面的にいつも“怒り”に覆われていたといいます。深く感情を感じられるようになっていった時には,悲しみや恐怖といった感情も沢山見つけたものの,この“怒り”への対処が日々の対処であったようです。
今,Aさんは、その当時を振り返り,「怒りは本当に私,子供,夫(当時),世の中の全ての人,世の中に対して向いていました。本当に,怒りは厄介なものでしたし,周りの人からすると,私が厄介な人だったと思います。でも,私自身,本当に何とかしようとしていたんです。でも,本当に何ともならないのではないかと,絶望的な気分になっていました。それでも,何とか取組みを進められたのは,今となってだけれど,怒りが何とか私を奮い立たせ続けてくれたからなのじゃないかな,って思うこともあるんです」と述べておられました。
しばしば,BPDと言われる人たちは,親などの養育者との関係で苦労をしてきています。虐待を受けてきた,という人たちもたくさんおられます。
Aさん自身,生まれ育った家庭には恵まれず,親とのかかわりを思い出すと,未だに許しがたい気持ちになるといいます。ただ,今は,許せないことがあっても,怒りに飲み込まれずに生活ができるようになっています。今後,親との関係を今とは違った形で見るようになるのかもしれないけれども,今はまだそこまでは進められないし,進めたくないとも感じているとのことです。
怒りという感情は,私たちに大切なメッセージを教えてくれます。この感情は,基本的には意図的に傷つけられたり,不当に扱われたり,自らの物を取られるなど被害にあいそうだと感じられた時に,自然に生じる感情なのです。
そして,怒りは私たちの活動レベルを上げ,自分や周りの人を守ろうと努力するように促してくれるのです。
今回は,Aさんの取組みを中心に,怒りという感情について理解を深め,怒りという感情にどのように取り組んでいったのか,アンガー・マネージメントの一例として,書いていきたいと思います。
続きます…。
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