認知行動療法

物理的世界と精神的世界をつなぐ

羅生門

 黒澤明監督の「羅生門」という映画は、芥川龍之介の羅生門・藪の中という二つの小説を合わせて作られたとされていますね。

 一つの事件について、人によって全く異なった見方をするものです。
 映画の中では、死んだ人も現れて誰もが自分の語るストーリーを真実だというものの、決してかみ合いませんでした。

人はどこに生きているのか

 人はどこに生きているのか?変な質問でしょうか。

 認知行動療法を創始したA.Beck博士も「人は自分の考えた世界に生きている」と述べました。

 対人緊張が強く、家の外に出るのが怖い人にとって、外の社会は脅威であり、社会を見る目はその人の見るように見えています。

 人好きで、世の中の人はみんな私の友達だ、なんて思っている人にとって、外の社会は楽しみの場であり、そのように見えています。

 それらの人が同じものを見たとしても、全く違ったものだと表現するでしょう。自分の気持ちは物事の見え方に関わりますし…。

 そうすると、私たちは現実を生きているのか、それとも正確な現実というものはなく、統計的に多くの人が「そう」と思ったとされる現実があるのみで、厳密にいうとその「そう」と同意した現実ですら人によって違うのでしょう。

 人は、物理的世界を生きてはいるものの、精神的世界も同時に生きており、その二つは本当に密接につながっているのです。

精神的世界の探求

 私のように心理を専門とする人間は、精神的世界を探求することを生業としています。
 そして、心理療法によっても、物理的世界と精神的世界のそれぞれの探求が異なります。

 どちらかというと、認知行動療法は、物質的世界とのバランスをかなり重視していますね。つまり、先ほどの統計的なスタンスです。
 深層心理に特化したアプローチは、精神的世界を重視していきます。

 もともと、私も深層心理学に興味が深く、当初は認知行動療法などを表層的である、といった見方も持っていたことがありましたが、認知行動療法の訓練から多くのことを学びましたし、自分自身の成長につながりました。

 自分の世界に対する見方も、誰もが持つように、私も随分と歪んでいるんだな、ということを自覚しています。

 そして、私の研究領域であるImagery(イメージ)は、物理的世界と精神的世界をつなぐアプローチです。

 自分の見方の偏りを知り、その限界を知り、謙虚にできることを続けていきたいと思います。

 コロナ不安、今後についての不安などでも、個人のみならず組織支援についての相談もお受けしています。

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