過去の心の傷
心理療法の中で,過去に傷ついたことについて取り上げることは多い。
理不尽な親からの暴力やいじめ,事故にあったことなど,トラウマティックな体験は特にそうであろう。
過去に体験した強い出来事に関して,未だにそのことを思い出すだけで胸が締め付けられるような感覚が湧き上がってくるということは,その出来事がまるで「とげ」として刺さったままに残っている,ということかもしれない。
その様な体験は,しばしば今現在の自分の行動や感情にも影響する。
今は安全だとわかっているのに,極端なまでに恐怖感が出てくる場面などもその一つかもしれない。
現在の自分の行動や感情が自然ではなく,現在の自分の苦痛に繋がっているが故に,心理療法で過去に光を当て,整理して,過去のとげを抜いていくのだ。
私も,過去の自分について沢山話を聴いてもらい,過去のとげも抜けたものが多い。
幼少時の体験で,性格が形成されており,過去の体験はそれをより強く固定化する傾向があるのだが,とげが抜けることでより柔軟さが増してきた気がする。
妻も,私が昔なら怒ってしまっていたであろうことでも,今は怒らなくなったねぇ,と言っている。
でも,別にいい人になったわけでもないし,いい人になりたいとも思っていない。
新しい価値観
人が成熟していく中で,自分がどのようになりたいか,どのような人として生活をしていきたいか,ということがより明確になっていくこともあるでしょう。
そのような学びは,過去の失敗を踏まえてもいるのだから,仕方のないことではあるのだが,新しい自分が目指そうとする自分像という視点に立ち,つまり新しい価値観で過去を振り返ってみると,随分と恥ずかしいことをしてきたということがはっきりする。
過去の体験を丁寧に辿り,当時のインナーチャイルドを呼び出し,彼の足らざることを責めず,ただ適切に導いていく作業を繰り返すことを繰り返していく。
必ずしも,「とげ」がささっているわけではないが,自分の未熟さと愚かさをひしひしと感じ,少しでも成長を促そうとする取り組みである。
友達とのトラブル,心の中で考えていたこと,止めたいのに止められなかったこと,そのほかちょっとしたことから,ちょっと大きいことまで沢山ある。
その様な自分を丁寧に辿り,自分との対話,インナーチャイルドとの対話を重ねていくと,ときに,少しそれまでとは異なった感覚が自分の中に生まれていることに気が付くことがある。
自分の振り返りに,沢山の時間は必要ない。むしろそれは,じっくりと長く続けていくことが必要な気がする。
今の自分も,刻々と変化し続けている気がする。
昨年,振り返りとして向き合った過去のインナーチャイルドに,また違うことを語り掛けることもあるのだ。
今の自分が,一つの価値観で一色に染まる必要はない。
私たちは,沢山の価値観を内包している。
言い方を変えると,異なる価値観を内包するそれぞれのインナーチャイルドがいる,という言い方もできる。そして,それらが対立するのではなく,協調的,相補的に働くのである。
このような振り返りを,自己の統合という人もあろう。
私の催眠の師匠であった,故 吉本武史先生も,同様のことを書き残しておられることに,最近,先生の本を手に取っていて気が付いた。
新刊のご紹介
今,新しい書籍『「7つの感情」知るだけで楽になる』の出版に向けて,最終コーナーに近づいてきています。
ネガティブに感じやすい7つの感情を理解する,そしてうまく付き合う,そんなことを丁寧に紐解いて解説したものです。また,ご案内しますね。
皆さんと,本を通していろいろと考えて頂き,様々なコメントを頂ければ嬉しいです。
コロナ対策を行っている心理相談室 玉井心理研究室
玉井心理研究室では、心理療法・心理カウンセリングの提供をしています。また、個人のみならず、組織や会社団体などにおける心理支援も行っております。
現在は、コロナ対策としてZoomやスカイプ、電話による相談も強化しております。