動作法
日本初の心理療法の一流派で,動作法というものがあります。聞いたことありますでしょうか?
臨床心理士第一号の成瀬悟策先生が,脳性まひの子どもの動作不自由を改善するために開発された訓練技法です。
過去に,学会の研修会などは受けたことがあり,本は幾つか手にしていました。
成瀬先生は,催眠から身体へのアプローチに進まれており,私の身体研究の中で時折目にすることがあり,改めてしっかりと触れてみたいなぁと前から感じていたものです。
地に足をつけて立つ
しっかりと足を踏んで立つ,簡単に思いますが,まぁじっくりと進めてみると,その取り組み自体が変化していきます。続けて取り組み,あちらこちらを緩めたり,体重のかけ方を変えながら戻っていくと,立っていることの実感が広がります。
腰骨を立てて倒す,膝立ちをする,私自身,背中の一部に負荷がかかりやすいことは理解しており,しばしば意識的にほぐしてはいましたが,そこが「居座り緊張」のある場所だと思われます。
人には,身体の使い方にパターンがあり,ときに様々な心の負荷を守るかのように体が少し無理をしてクッションのように働いてくれます。
感情を代行するからだ
ちょっとした私の体験です。
少しイライラすることがあって,気が付くと手を椅子のへりにトントントンと打ち付けていました。
自分のその行動に気が付いて,その行動を意識的に止めて,自分の身体の中の感覚に意識を集中しました。
手の動きを止めると,その部分から何かが身体の真ん中に這い上がってきて,身体の真ん中に戻ってきたときに,しっかりとイライラした感じとしてそれを感じました。
へぇ,からだが守ってくれているんだなぁと思って,次の実験に進みました。
次は,意識的に最初していたように手の動きを戻す,つまりトントントンと打ち付けることを再開したのです。
すると,からだの真ん中で感じていたイライラがそちらに移動するのを感じ,イライラは消え,手の動きがその感情を感じることを代行していることを実感しました。
からだは,私がイライラすることから守ってくれていたのです。
からだのパターン
ものの考え方には癖がある,よって気持ちの出方も人によって特徴的である,ということを認知行動療法について書いてきたこともあります。
自然に頭の中に浮かぶ考え,その考えの傾向も独自性があります。
良い悪いは考える必要はありません。
ただ,パターンとして浮かぶ考えは,事実を適切に表しているというよりも,ある種のフィルターを重ねているとも言えます。
思考も掴めるようになるには少し訓練がいりますが,内的な行動なのです。
行動は,客観的に観察しやすいものです。
そして,からだの使い方を意識することで,からだが無理をして私たちの心を守ってくれていたはずなのですが,いつのまにやらその無理がたたって,負荷があってもなくてもその部分の動かし方に一定の癖がついてしまっているのです。
そんなからだのクセを修正していくことを通して,こころが体験してきたことを整理し直していくことができるのです。
動作法は,言葉を介して行う支援とは異なります。
どのような行動課題が適しているのかを確認し,その取り組みを続けてもらうのです。
オンラインでもやっているとのこと,それは体験していませんが,又その機会もあるでしょう。
こころもからだも,私たち一人一人が持つクセから自由なものはありません。
そのクセを徹底的に見つめ,それを失くすのではなく,それが自分の負荷を大きくしないように一緒に住みやすくする。心理療法とはそんな取り組みですね。
玉井心理研究室では、心理療法・心理カウンセリングの提供をしています。また、個人のみならず、組織や会社団体などにおける心理支援も行っております。
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