ストレスって悪者じゃないらしい よ
ストレスという言葉,この外来語は,日本で最も使われている外来語だと聞いたことがあります。それぐらい,状況を整理するのに便利な言葉なんですね。
ちょっと嫌なことがあると,「ストレスだぁ」と思ってしまうこともありますよね。
いろいろな精神的な不安定な状態や原因のよくわからない病気について,お医者さんから「ストレスですね」と言われてきたという人も沢山います。
お薬を飲んで,落ち着く人もいますが,時にはより不安定になってしまう人もいるので,人それぞれです。
ストレスという言葉の利用は,セリエ・ハンスの研究から始まっています。そして,ストレスという言葉に対して多くの人が抱くイメージは,心身に対するネガティブな負荷,といったものではないでしょうか。
マウスを使って新しいホルモンを抽出する研究をおこなっていたセリエは,いろいろな物質をマウスに注射しても、必ず共通して現れる3つの症状(副腎皮質の肥大,胸腺や脾臓の萎縮,胃、十二指腸の潰瘍・出血)を発見したのです。
ストレスに対処しきれない,だから苦しいけど自分の活動レベルを落として,「死んだふり作戦」をするしかない,というのがセリエが見出したストレス反応です。HPA系と言われるものですが,そのあたり詳しいことは,好きな人は調べてみてください。私が「トカゲの神経」と呼ぶ,背側迷走神経系に関わることです。
ストレスは結構大切
実際にストレスは,私たちにとって本当にマイナスなものでしかないのか,考えてみたいと思います。ストレスが無いと,どうなるのでしょうか。
実際,私もストレスは嫌いですけど,しばしば,本当に手に入れたいものはストレスの向こうにあります。
簡単に手に入るものは,大したものじゃないね,と思ってしまいますしね。
私は,ストレスを0にしようという無茶なことを目標にはしません。その取り組みは,あまり現実的ではなく,効果的でもありません。なぜならば,その発想自体がストレスを悪者として定義づける,という前提の後のものですから。
ただ,手に入れたいものを簡単には手に入れさせてくれない,ちょっとお邪魔な存在ではあるのですが,手に入れようと学んだり,人に助けを求めたり,気持ちが揺さぶられても整えたりと,その過程で身に着ける技術は,結構生きていく上で必要だったりします。
ストレスを0にするよりも,適切なストレス対処法を持つこと,まずはこれを身につけておきたいですね。どのようなストレス対処法が良い,ということは個人の好みがありますので,一概には言えません。
ただ,多くのストレス対処法を持っていることを自覚できていることは大切です。
改めて,日常生活の中で自分が採用しているストレス対処・気分転換法を確認してみて欲しいと思います。趣味のようにじっくりと時間をかけたものから,瞬間的にできる体操や,先々の楽しみというものまで,様々あると思います。余りにも浮かばない場合には,じっくりと考えてみるか,周りの人とも会話する中で確認してみて欲しいと思います。
ストレス対処として,大切なポイントは2つあります。
一つ目は,心からホッとする,心が温まるような,ゆったりする時間をどのように持てているのか,確認して,その時間を大切にすることです。これは,心に栄養を与えてくれます。
二つ目は,能動的なストレス対処法を持つ事です。テレビをぼんやり見るのが好きな人には,それでも良いのです。そのような受動的な活動も,気分をぼんやりさせるのであれば効果があるのですが,囚われているものから離れる場合にはあまり機能しません。嫌なことから離れるためには,能動的であることが大切です。テレビにしても,のんびりゆっくり見るのではなく,好きで引きつけられるようなものでないと,のんびりしているとそこに変なものが入ってきてしまいます。
役に立つストレスと,役に立たないストレスを確認する
ストレスは,決して嬉しいものではありませんが,私がお世話になった先生は,いつも敵を作って,自分を追い詰めて発奮してチャレンジしていく方でした。ストレスをうまく(とはとても思えなかったのですが)活用していた,ともいえます。
ストレスは,必ずしも問題ばかりではないことが,わかってもらえたと思います。
ただ,役に立たないストレスもあります。いじめや明らかに過剰な負荷などは,「自分の限界が分かったから,それはそれで意味があった」という人もいますし,「あれだけの体験をしたから,もう怖いものがなくなった」という人もいますが,自らを追い込みすぎるものには積極的には賛成できません。
人によって,大切なものが何か,価値観が何か,によってストレスも変わってきます。大切なものを守るために,ストレスはかかりますが,それには意味を見出すでしょう。働いている多くの人たちが,家族のために頑張らないと,ということもその分かりやすい一例です。
パッと出てきた表面的な感情と,その感情にとらわれてしまいそうになるけれども,ちょっとやり過ごしてその向こうにある感情を見つめる,そんなステップも踏めるようになってくると,自分の気持ちが落ち着いてみられるようになってきます。前述の,仕事が大変(パッと出てくる感情)だけど,家族のために頑張ると家族が喜ぶ(その先に見える感情)ことを支えに,それでも自分の限界をちゃんと見極めながら取り組みを進める,そんな取り組みができるとよいですよね。
自分の気持ちを整理するために,安心できる人に話を聞いてもらえるのであれば,それは本当に助けになると思います。そのようなことがすぐに叶わないとき,または客観的に,それでもちゃんと自分の状態を確認したいとき,私たちのような心理の専門家たちのことも,うまく利用していただければと思います。
玉井心理研究室では、心理療法・心理カウンセリングの提供をしています。また、個人のみならず、組織や会社団体などにおける心理支援も行っております。
現在は、Zoomやスカイプ、電話による相談も強化しております。