心理雑感

陸前高田を歩く 

新しい一歩

 震災後、毎年のように陸前高田を訪れていた。
 たくさんの人の話を聴かせてもらいました。
 この2年ほど、諸事情で行けていなかったが、久しぶりに行く機会を得た。

 陸前高田は地形の関係もあり、被害がすさまじく大きかった場所で、奇跡の一本松で有名です。

 陸前高田の復興は、旧市街地を全面的に土地をかさ上げする、という世界でも例を見ない形で進められました。

 毎年、大きなベルトコンベヤーで山から運ばれた土が、土地に積まれてその間を車が走っていたのに、かさ上げした土地に店もでき、少しずつ町としての再開発に向けて進んでいる、そんな姿を実感できました。

防潮堤

 タクシーでホテルに戻る途中、街を歩きたくておろしてもらい、一人で歩きました。アバッセ(という名の商業施設:「アバッセ(あばっせ)」とはこの地方の方言で「一緒に行きましょう」という意味とのこと)を散策しました。

 ちょうど、店に入っている時間帯に外では雨が激しかった模様。出たら地面が水たまりだらけで、びっくりした。靴も水に弱いものを履いていたので(この間、そういうこともあるかとはうっすら予想していたので、やはり…という感じ)で、即効水を吸い込んでしまった。

 すぐに雨はやんだようで、海に向かい、というか海岸を全面的に守っているがあるはずの防潮堤に向かって歩きます。
 運動公園を超えて、防潮堤に向きあいます。

 一体、どれだけ大きなものを、どれだけのエネルギーをかけて作ったのか…。高さ14メートル、総工費300億円、高さ12メートル、2キロメートルに伸びた巨大な山。

 まだ明るい夕方ですが、威容に圧倒されながら、色々な考えが頭をよぎります。

 防潮堤の上に立ち、初めて潮の香がしてきます。

 想い…重い。
 海と街を隔てる重く存在感のある壁、ここに住む人はこれを求めたのでしょう。これを必要とするほどに、気持ちが重く沈んだのでしょう。

 自然な変化が許せば、心の重さは変化していきます。
 ただ、一時的にその重さを代わりに引き受けてくれたであろう物理的な防潮堤の重さは、残ります。

ホテル着

 ホテルに戻る道々、区画されたかさ上げされた土地が広がっています。
 この場所に、戻ってこれるのだろうか…。
 区画票が寂しそうに感じる。しかし、人は既に別のところで生活を始めているのでしょう。

 ようやくホテルにたどり着いたところで、フロントの千葉さんという男性に話を聴かせてもらいました。
 千葉さんは隣町の、大船渡の出身とのこと。

 陸前高田の津波が来た日の状況、14メートルを超えて街を襲った海、木にしがみついて助かった人たち、日が昇った後の風景の変化、何回も聞いてきたことだが、防潮堤の大きさと重たさを感じた後に、改めて耳にすることは、少し違って体に響きました。

 たくさんの人が、生活を続けています。
 今年はコロナで色々とどこも大変ですが、しっかりと対策をしながら、街は育ちつつあります。
 赤ちゃんや子供を育てているお母さん、お父さんの話も聞かせてもらいました。
 日本の一つの大切な田舎ですね。

 なぜこれほどまでに復興にエネルギーを注ぐのか、これは、人が故郷を必要とするからでしょう。

 人は、心の帰る場所を求めるようです。
 陸前高田に、来ることができてよかった。

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右の画像、どこにあるか見つけられるでしょうか(笑)

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