スピリチュアリズムと臨床心理
「インナーチャイルドワーク」とインターネットを検索すると、一ページ目は殆どスピリチュアル系のHPが並んでいます。
これは、いったい何ごとなのだろうと思い、臨床心理士らが心理臨床の中で取り組み提供するインナーチャイルドのワークと、スピリチュアリズムの中で占い師らが提供しているインナーチャイルドに何か違いがあるのだろうか、考えざるを得なくなりました。
精神科医の越智啓子さんも、インナーチャイルドの本をいろいろと出していますが、それを読むと背景としては学術的な側面を維持している雰囲気がありながらも、言葉として「魂のレベルが高い」などと書かれると、スピリチュアル的な雰囲気を漂わせてもいます。
「癒し」という言葉自体が医療の中では、奇妙な言葉として位置づけられがちである、という指摘もあります。
インナーチャイルドという用語は、アダルトチルドレンという言葉と近く使われることも多いように感じていますが、それらの言葉自体が学術用語としての立場を未だ確立していない、または学術領域がそれらの用語を学術用語として組み込んでいくことをあきらめた、という側面もあるのかもしれません。
実際のインナーチャイルドワーク
それらの言葉遣いの特徴は、横に置おいてもいいのかという気もしますが、一旦は横に置いておきます。
実際に心理臨床の場において、クライエントさん(相談に来ている人のことです)が過去の自分との対話としてインナーチャイルドワークを行うことはあるのです。
また、占いの館が出している書籍や情報で、「過去の自分を思い出して、抱きしめてあげましょう」と書いてある通りに実践している人たちも少なくないのでしょう。
つまり、クライエントさんが行っている行為自体は、大きくは変わらないと思われるのです。
医者が行う治療行為だというのであれば、これは法律で禁止されていますが、インナーチャイルドワークはその対象ではないのですから、誰がどのように進めてもよい、ということになってしまいます。
関係性と安全、そして研究
インナーチャイルドワークについて、「このようにしたら進められますよ」と書かれた説明では、簡単で誰もができること、となっています。
ただ実際に相談場面で出会うのは、そんな簡単ではないことも沢山あります。
臨床心理士たちが提供する支援の場では、CLさんに対してその方法論を教えるのみならず、その実践を身に着けていくために共に取り組み、そしてCLさんが自ら自分との付き合い方を身に着けていくサポートをしていくのです。
人の心の深い変化は、ワークのみによって変わるのではないのです。
CLさんとセラピストの人間関係を土台として、その中での変化を丁寧に確かめていくのです。
昔、日本のあちらこちらで開催されていた日本カウンセリング学会の研修会に参加しまくっていた時期がありました。
ある時、先生がこんな質問をしました。
「あなたが悩みを抱えていて、目の前にカウンセリングルームと占いの部屋があると、どちらに入りますか」
というものでした。なんと、多くの人が占いの部屋と答えたのです。
占い師の人たちの営業努力と頑張りに敬意を表しつつ、臨床心理領域におけるこの分野に対して、しっかりと進めていくことの必要性を感じております。
今現在、この領域における幾つかの論文の執筆に取り組んでいますが、とても面白い世界です。
インナーチャイルドワーク、本当にしっかりと取り組むことで、自分との付き合い方が変わっていくのです。私も過去にたくさん経験しましたし、そのようなワークも提供しています。
自分が取り組んでみたいと思う方は、まずは気軽にお問い合わせください。
玉井心理研究室では、心理療法・心理カウンセリングの提供をしています。また、個人のみならず、組織や会社団体などにおける心理支援も行っております。
現在は、Zoomやスカイプ、電話による相談も強化しております。
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