診断の難しさ
ここでは、正式な双極性Ⅱ型障害ではなく、躁うつ病という表現で書いていきます。多分、その方が理解しやすいでしょうから。
まず、この躁うつ病の難しさについて、お医者さんたちからよく聞くことは、その診断自体が難しいことがある、ということです。理由はいくつか挙げられると思います。
①抑うつエピソードから始まり、圧倒的にそのエピソード機関の方が長い。
②その抑うつ状態が、うつ病の単極性のものか、躁うつ病の双極性のものか見分けがつかない。
③軽躁エピソードを「調子が良い」のでそれが基本である、と考えてしまうことがある。
こんなことがあると、知り合いの先生にはいますが、躁うつ病のかなりの専門家でないと、その治療のスタートとなる診断からして難しそうです。
ま、多くの場合、途中から診断がうつ病から躁うつ病に切り替わるということが多いように思います。現実的に考えて、現段階では仕方がない。
アプローチ1 うまく薬と付き合う
服薬治療、これは外せないですね。詳しくは医師のHPなどがあるから、ここでは記載は省略します。
うつ病の投薬の場合には、抑うつ気分を上げようとするのがその方針ですが、躁うつ病の場合には、気分を上げてしまうとそう状態になってしまい、不安定になるので、この投薬方針が随分と異なります。
ただ、躁うつ病の診断を受けた人は、「ずっと飲み続けるんですよ」とお医者さんから言われていると思います。 これは、守った方がよいことです。気分の波を少なくすることとともに、再発予防にもなっているのです。
アプローチ2 病気を理解する
躁うつ病の診断が出たら、この病気を理解することが必要です。
ほかの病気であれば、糖尿病と診断されたと想像してください。糖尿病の人はうつ病になる傾向が少し高い、といった報告とは別です。
糖尿病になれば、家族も含めて食事のあり方、生活、仕事とのかかわり方など色々と工夫していくことと思います。重症にならないように、今はよい薬もたくさん開発されてきていますが、長期にわたってその治療は続けていくのです。
躁うつ病も、長く続ける治療が必要です。回復したとしても、再発予防をずっと続けないといけないのです。これは、大変な治療を続ける、というよりもセルフケア、つまり自分に優しい生活を続けないといけない、というように理解されると良いでしょう。
アプローチ3 心理療法
そして、心理療法・カウンセリングはかなり重要です。認知行動療法を中心に、対人関係療法なども取り入れて進めることが多いです。
躁うつ病は、すでに気分の上がり下がりの波が大きな病気、ということは理解していただいていると思いますが、その気分の上下を数値化して表にするなど、いろいろな気分の把握の練習を行います。
気分が上がり過ぎそうなときにどうするか、上がり過ぎ気味になったときにどのようになるのか、下がり過ぎそうなときにどうするか、下がり過ぎ気味になったときにどのようになるのか、その客観的理解と対策をしっかりと作って練習していきます。
また、人によっては様々な刺激で気分の上がり下がりが強く影響されますので、その刺激を確認し、刺激から自分を守れるのか、環境的に守り切れない刺激もあり、その場合にどのように自分が受けた刺激を均すのか、そのような工夫も必要になっていきます。
抑うつ状態のときには、寄り添って話を聞いて気持ちの変化を促す、などということもあるでしょうが、長期的には服薬と並行して 再発予防につながる生活スタイルを身に着けてもらうための練習、という側面もあります。
アプローチ4 再発予防
すでに書いてきましたが、躁うつ病が治っても、再発はしばしば目にします。
私の経験でも、本当に寛解したのかな、と思うようなケースでも、やはりその方が治療を完全にストップしてしまうと、時間がたってもやはり再発しているな、という例を見てきました。
この病気はどちらかというと若い時に発病することが多いのですが、20代の方に対しても、「もし20年後に落ち着いていたとしても、半年に1度以上は定期的に治療に通っている、それを維持していたほうがいいですよ」とはお伝えしています。
家族の理解
家族の方は、この躁うつ病に対する理解を一緒にする、ということをお勧めします。
実際には、そう状態のときには、家族は振り回されて大変になります。躁うつ病の本人は問題ない、と言い出すかもしれませんが、客観的な情報を主治医と共有することが必要な場合もあるかもしれません。
一方、うつ状態のときには躁うつ病の本人は静かですから、家族としては落ち着いてみていられるでしょうから、寄り添いつつ普段と同じように接しいていければよいでしょう。心配な行動があれば、それには対策が必要ですが。
以上、本当にざっとですが、簡単に躁うつ病の治療アプローチを書いてみました。時々、カウンセラーの支援を受けています、という躁うつ病の人に出会っても、適切な情報共有と教育、対策の構築などが少ない、ということもあります。
ちゃんとトレーニングを受けている臨床心理士などの支援を求めることは、役に立つと思います。といっても、そのトレーニングをどのように、どの程度受けてきているか、ということがわからないので心理士・カウンセラー選びに悩む方も多いかと思います。
ここで書いた情報は、現段階の基本的なものでしかありませんので、これらの情報を共有したうえで、ちゃんとそれらを土台に分かりやすく説明ができる心理士・カウンセラーなのか、話をしていく中で確かめていくことも必要になると思います。
心理士・カウンセラーも、自分の限界を理解するのが倫理でもありますので、そのようなことについて率直に話し合えってくれる人であればよいですね。
玉井心理研究室のメインホームページ、ほかにもいろいろな情報発信をブログでもしていますので、ご覧いただければ嬉しいです。