服薬と心理療法の活用
うつ病の治療の基本は、休養を取る、薬物療法、心理療法の3つになるでしょう。
まず、うつ病の方は心身のエネルギーが枯渇してきている、ということでもありますから、休まざるを得ない状態でしょう。
休養は、まず最初に必要、というより必須です。体がもう本当に動かない、というところまで悪化している人の場合には、選択の余地はないでしょうけれども…。
相談にいらっしゃる方の多くに、お薬を飲むことを嫌がる方が少なくありません。
実際には、お薬があって楽になった、という方は少なくないので、適切な処方を専門の精神科医から出してもらうことは有益です。
加えて、うつ病の治療で心理療法は有益な選択肢としてあげられています。実際に、薬物療法でうつ病が改善されるのと、同等の効果を上げているという研究結果も多くあります。
日本では、認知行動療法が心理療法の選択肢として高い効果を上げているという研究もあることから、実際の治療場面で導入されることが多くなってきています。
精神科医の先生で、患者さん(心理ではクライエントさんと呼びますが)が紹介いただくときに、解りやすい表現をされた先生がいました。
「私は体をみるから(薬物処方を行うから)、心は任せるよ(心理療法を行ってくれ)」という表現で、うまく協働体制が組めて、うつ病で苦しんでおられた人の回復に向けて良い支援が提供できました。
回復は少しずつ波のように
認知行動療法の説明は、このブログのメインホームページでも紹介していますし、過去のブログでも色々と書いてきていますので、詳細は省略させていただきます。
うつ病の人の回復は、臨床心理士や心理カウンセラーとの関係の中で、しっかりと知識と取り組みの支援を得ながら急激なものではなく、少しずつ風呂桶に水がたまるように、ゆっくりと進みます。
その取り組む過程では、多くの人が自分の性格傾向や、対人関係構築スキルの偏りなどについても気付くことも多く、新しい精神的、対人的スキルを身につけていくことにより、それまでよりもより生きやすい生活を送れるようになることが多いようです。
その関係のスキルの一部も、過去のブログで「境界線」というテーマで書いているところもありますので、参考にして下さい。
この点が、しっかりと心理療法を受けることのメリットでもあるでしょう。身体的な回復だけならば、休養と薬物療法でも十分進むのですが、あるクライエントさんが後々言ったことですが、「転んでもただでは起きない」という姿勢は役立ちます。
どんな人でも体調にも波があるように、回復の過程でも波があります。ちょっと前に出来たことができなくなるように感じたりすることもありますが、それは最初に戻ったこととは異なりますから、安心してください。
周りの人の対応
また、家族や身近な人がうつ病になった場合について、簡単ですが書いておきます。
まず、うつ病について理解して、何が原因だったのか専門家に本人と一緒に確認できるのであれば、確認していければよいと思います。
本人の性格のせいだ、というシンプルな推測は、本人の回復に役立つことはありません。
睡眠と休養が重要ですから、それをできるだけ勧めてあげてください。なまけのように見えることもあるかも知れませんが、車のガソリン切れのようなものですから、動かそうと思ってもエンジンが止まるだけです。
精神科医、心療内科医、心理士といった専門家の支援を仰いでください。本人が行きたがらない場合には、一緒に行ってあげてもよいでしょう。
治療が進み始めたら、本人の回復ペースを大切に、急かしたりせず、また過剰に保護してあげることでもありませんので、見守ってあげて頂けるとよいでしょう。
再発について
働く現場では、精神的な病、特にうつ病などは多くの人が再発する、ということが言われたりもします。
ただ、私の実感としては、しっかりと体のみならず、心理カウンセリングを求めて取り組まれた場合には、自分で過去の苦しみがどのように自分の考え方や行動とつながっていたのか、自分の傾向を理解し、自分を受け入れ、対策を身に着けていますから、同じ問題での再発は本当に少ないものです。
うつ病は、本当に苦しい精神的な病ではありますが、誰もがなる可能性があるものですし、治療をちゃんと受けることで回復しますので、一歩一歩取り組みを進めて頂ければと思います。
玉井心理研究室のホームページでも、様々な情報を発信しておりますし、過去のブログも併せてご確認ください。