ある日の一大事
私の父は、ある日突然、仕事場へ向かう電車の中で倒れて急死しました。虚血性心筋梗塞でした。私はその時、ちょうど次女の出産のために、父の死の10日ほど前から実家に、長女と一緒に滞在していました。
私には妹と弟がいますが、妹もその時妊娠が分かったばかりで、弟のお嫁さんも妊娠5ヶ月ほどでした。
あまりにも突然の伴侶の死に放心状態の母を支え、葬儀の準備をしなくてはなりませんでしたが、私はもう臨月に入っており、長女もまだ2歳になったばかりで手がかかり、あまり役に立つことはできませんでした。
唯一の慰めは、何も状況が分からない長女が明るく振舞うので、周りの人たちの心も和むことでした。
妹の存在のありがたさ
弟夫婦はもちろん、妊娠中の妹も、つわりがあったにも関わらずとても良く動いてくれました。
特に妹は、経済的なことを心配する母のために、通夜振る舞いや火葬中の食事も、葬儀屋さんに頼むと高くつくからと、自ら100円の回転寿司の持ち帰りを注文して取りに行ってくれたり、ディスカウントの酒屋に飲み物類を買いに行ったり、宅配のお弁当を頼んだりと、文字通り東奔西走してくれました。
お香典返しも、大阪の卸問屋まで出向き、かなり経費を抑えてくれました。
世帯主が父だったので、あらゆるものの名義の書き換えが必要となり、混乱する母に代わって事務的なこともさっさとやってくれ、葬儀のもてなしが悪かったと文句ばっかり言ってくる親戚を撃退し、妹には本当に助けられました。
無事葬儀が終わって2週間ほど経ったら次女が産まれました。私は5日間ほど入院することになりましたが、その間の長女の世話も妹が中心になってやってくれました。
私が退院した後、赤ちゃんの世話に手を取られ、なかなか遊んであげられない私の代わりに、妹は長女を色々なところに連れて行ってくれました。
「ヒマな人」のありがたさ
こうして書いてみると、あの時は本当にいろいろ助けてくれたなあ、と感謝しかありません。
あの時の妹は、結婚して妊娠もして仕事を辞めて、割とヒマだったと思われます。今は、手術をしてすぐに退院となり、術後の痛みに苦しむ母の世話も、「私は忙しくてできないから!そんなことしたら倒れる!!」と息巻き、昔とは大違いです。
それでも、なんだかんだ言って、色々母に付き合ってくれているようですけどね。
ヒマな人って、ヒマに任せて余計なことを考えたりしてしまうと困りますが、こちらが困っていたり手伝って欲しいときに二つ返事をして引き受けてくれるので、とってもありがたい、と気付きました。
いや、それよりも、本当は忙しくても、助けを求められたらさりげなく時間をやりくりして、「ヒマだからいいよ~」と言ってくれる存在はなんと心強いことか。
学校の役員を引き受けて下さる方たちも、意外とお仕事で忙しい方が多いのですが、涼しい顔して参加してくださいます。
私も、忙しくても心の余裕を忘れず、「私、ヒマだよ~」と言える人になりたいと思います。