心理雑感

“ルイ=パストゥール”について

『細菌と戦うパストゥール』

 『細菌と戦うパストゥール」(偕成社文庫)という本は、科学史家であり哲学者の、ブルーノ・ラトゥールが書いた、パストゥールの伝記です。

 パストゥールは、狂犬病のワクチンを開発して接種して子供を守りました。

 簡単に、この本の紹介を通して、パストゥールの経歴を辿ってみたいと思います。

19世紀中ごろの医療

 パストゥールは1822年生まれのフランスの人ですが、当時のフランスは、風邪でも死ぬ人が沢山いる、出産は命がけ、外科手術をしたでも、多くの患者たちがなくなっていくのを見守るしかない、そんな時代でした。

 パストゥールは、化学者で大学では有機物と無機物を見分ける技術を確立したのです。これは、生物と無生物を見分ける技術となったのです。

 その後、グレープジュースとワインの違いについて、ワインは酵母が発行することでできている、ということを証明しました。現在でも低温殺菌という言葉を耳にしたことがある人もいるでしょうけど、これも実はパストゥールの発見です。
 酵母の働きに詳しくなっていったパストゥールは、酸素を必要としない細菌、つまり生きている時には眠っているけれども、その生物が死んだ後には働き始める細菌、ばい菌のようなものでしょうが、これを発見し、それが様々な伝染病の原因であることを示してったのです。

生物の発生

 パストゥールの意見には、多くの賛同者もいましたが、反対者もいました。実際に、物を腐らせる微生物が問題なのか、問題があるところに微生物が集まる傾向を持っているに過ぎないのか、公開で実験が行われました。
 その様な検討が行われていくにつれて、丁寧な作業を続けていったパストゥールは、その評価を高めていったのです。

 実際には、彼の子供は相次いで死に、身近な人たちの死も多く、仕事も退き、更には普仏戦争も始まる、そして病気になり半身も不随になる、そんな苦しい時期も過ごしました。
 それでも「まだ死にたくない、この国の役に立ちたい」と言っていたとのことです。

 そんな中、フランス政府からの依頼で、蚕の病気の原因を突き止めて欲しい、という難問にチャレンジして、今までの研究方法を活かして結果を出したのです。

小さな生き物を探す

 パストゥールの発見は、ワインやビール、酢の醸造について、絹織物、そして微生物を殺菌するための消毒法などと、広く世界に広がっていったのです。

 ただ、それでもパストゥールは実験室の科学者でしたので、病気という医者が扱う領域には踏み出すことをためらっていました。
 蚕の研究で、微生物が蚕を畑として繁殖していたことを突き止めたパストゥールは、次には炭疽病という奇妙な名前の羊の病気を研究しました。

 この炭疽病は、毎年何万という羊や牛が死んでいましたが、急に表れたと思ったらすぐに消えたりして、農夫たちから「呪われた土地」と呼ばれるどこかの牧草地からくるものだと思われていました。
 パストゥールは、炭疽病にかかった動物の血液の中から、炭疽菌と呼ばれる小さな棒状の微節物を見つけ、これを培養したり薄めたりして、接種していくことで炭疽病の原因を特定したのです。
 それでも、医学者たちは、医学の勉強をしていない化学者であるパストゥールの意見を採用せず、なかなか認められませんでした。

ワクチン接種

 ジェンナーという人をご存じですか?18世紀終わりに天然痘のワクチン接種を発明し、世界に広げた人です。1958年には世界的に天然痘をなくす計画が進められ、1980年には天然痘ウィルスが地上からなくなった、という宣言がされたのです。

 パストゥールは、ジェンナーの天然痘のワクチン接種から100年後に、新しい予防接種法を発見したのです。
 病気の原因である微生物を特定し、その毒性を和らげ、接種することで抗体として機能させる、という画期的なものだったのです。

 その後、パストゥールは狂犬病のウィルスに挑戦し、その研究は弟子にも引き継がれ、成果を上げていくのです。
 ある時、1885年に狂犬病の犬にかまれた少年が、彼らの実験室に運び込まれました。ただ、パストゥールらは少年の治療を断ります。今までは、全て動物の治療だったのです。
 ただ、医師の強い説得で、放っておくと必ず死ぬ運命にあった少年の治療に対して、今まで行ってきたことを実践することを了承したのです。
 パストゥールが40年という時間をかけて研究を積み重ねて、ようやく人間の治療にたどり着いたのです。

 この狂犬病にかかった少年は、無事に発病せず、その後パストゥール研究所の管理人として働いたとのことです。

ワクチンから血清へ

 その後、パストゥール研究所は世界に広がっていきました。
 パストゥールの弟子のルーは、血清療法も編み出しました。

 このような研究は、現在も続けられており、バイオテクノロジーの分野もけん引しています。技術者でもあり、生物学者でもある高い専門性をもって、活躍しているのです。エイズウィルスを発見したのも、パストゥール研究所の研究員でした。
 パストゥールは、コッホとともに現代細菌学の祖と言われています。

 丁寧に、一歩一歩進めていく、不安な中でも、一生懸命考え、手を動かし続けて科学を発展させた人に、本当に心よりの敬意を感じます。

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