プロフェッショナル 潜水調査船・しんかい6500
NHKのプロフェッショナル 仕事の流儀を時々見るのだが、先日は潜水調査船・しんかい6500が放送されていた。このしんかい6500、6Kとも呼ばれており、1991から運用され始め、いまだに現出来で深海研究に力を発揮している様子。
深海は、宇宙と同様に深い謎に囲まれている。その世界を探求することは、危険でもあろうがロマンでもある。
現在は、宇宙も深海も、人の乗船をしない無人探索機が増えているという。実際に、番組でも優秀な若い研究者の卵のような人が、6Kは不要で無人探索機にすべて置き換えられれば安全である、ということを語っていたが、実際に潜航プロジェクトにかかわる中でそのロマンに触れたのか、6K自体の意義も認める発言をしていた。
体験しないとわからないこと
番組を見ながら、体験しないで知識だけで物事を考えることのリスクを考えていた。確かに、知識は多くの知能の高い人たちが研究し続け、考え続けてきたエッセンスであることも多く、本当に役立つものがある。
ただ、その知識を得ることで、自分が体験していないことを「わかった気になる」ことが怖い。確かに、すべて体験することは不可能だし、想像していることと実際が同じ体験とも言い切れない。しっかりシミュレーションすればよいのだろうか、実際の体験が必要なんだろうか、という疑問すら生じて、悩ましい。
番組の中で、研究者の高井研さんが「サイエンスだけを考えると有人潜水船はどうしても必要なものではないけど、必要なものだけを残すと、たぶん人間社会にはよくなくて、必要じゃないものの必要性を感じる人間がたくさん出てきて欲しい」と述べていて、首肯した。
知識や情報としては、「こうなるはず」という予測や推測は大切だが、実際には「わからない」部分も少なくない。「わからない」ことは恥ずかしいことでもないのだが、「わからない」ことは悪いことだと考える人は多い。
学びを深め、知識も経験も重ねていけばいくほど、「わからない」ことに自信をもって「わからない」と言えるようになる気がする。多くの経験豊かで優秀な人たちと話すたびに、「わかっていること」「わからないこと」を率直に表明しつつ、とても現実的な対話が進む経験をする。
「わからない」から好奇心が維持される
好奇心は、人にとってとても大切な行動の源泉です。「わからない」「できない」ことがあるから、「わかりたい」「できるようになりたい」となるのです。
人類が世界で積み上げてきた知恵は広く、専門家たちは自分の領域のそれらの知恵を学び、更にもう一歩深めていこうと取り組み続けるのです。
世界の知恵ではなくても、人は誰もが「自分が生きていく知恵」を探っている。仕事、家族、人との交流や何か追及するテーマを持ち、生きがいや価値観を見出す。一人一人、自分の専門家になれる。
自分の体験から学び、自分の生きる意味を見出し、よりよい生を探求する人たちを心の側面から応援していく、そんな学びが心理学の世界でもあります。カウンセリング・心理療法も同様の作業かな、と思います。
今日は、テレビを見ていて考え始めたことから、手が動くままに取り留めなく書いてしまいました。最初は、前半の若い研究者の卵の発言から、世界の情報のあり方の変化が及ぼす、心理療法の世界における様々な変化について書くつもりだったのに…。まぁいいか。
玉井心理研究室のホームページでも、過去のブログでも様々な情報を発信していますので、そちらもご覧いただければ嬉しいです。