うつ病になる確率
皆さんは、うつ病になる確率、というものをご存知でしょうか。
厚生労働省の発表では、日本では欧米よりは低いものの、生涯に約15人に1人、過去12ヶ月間には約50人に1人がうつ病を経験しているとなっています。
それら、うつ病になった人の1/4程度が医師を受診していますが、残りの3/4は、病状で悩んでいても病気であると気づかなかったり、医療機関を受診しづらかったりして、医療を受けていないとされています。
病気として国でも認定されているものなのに、病気と思われない、ここに心の病気の難しさがあります。
しばらく、とびとびになるかもしれませんが、様々な精神疾患についての説明や対策など、読んでもらった方に役立つ情報を届けるべく、玉井心理研究室ブログとして書いていきたいと思います。
まず、この精神疾患シリーズの初回では、うつ病を取り上げます。
大うつ病性障害の診断基準:DSM-5による
うつ病の診断基準について、正式には大うつ病性障害となりますが、DSM-5の診断基準を基本的にはそのままに、ただ一部加筆修正して紹介します。
DSM-5とは、アメリカでつくられた精神疾患の分類と診断の手引きなので細かいものですが、以下の文中の【】の中は、簡単にまとめたものですから、一般の皆さんにも分かり易いかと思います。
A.【2週間以上、①または②のどちらかを含む以下のような症状が続けばうつ病の可能性あり】以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在し、病前の機能からの変化を起こしており、以下の①または②のどちらかを含む。
①【悲しい、憂うつな気分、沈んだ気分】その人自身の言葉(例:悲しみ、空虚感、または絶望を感じる)か、他者の観察(例:涙を流しているように見える)によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分。
注:子どもや青年では易怒的な気分もありうる。
②【何事にも興味がわかず、楽しくない】ほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての活動における興味または喜びの著しい減退(その人の説明、または他者の観察によって示される)。
③【食欲がなくなる】食事療法をしていないのに、有意の体重減少、または体重増加(例:1ヵ月で体重の5%以上の変化)。またはほとんど毎日の食欲の減退または増加。注:子どもの場合、期待される体重増加が見られないことも考慮せよ。
④【睡眠の不安定】ほとんど毎日の不眠または過眠。
⑤【落ち着かなかったり、動けなくなる】ほとんど毎日の精神運動焦燥または制止(他者によって観察可能で、ただ単に落ち着きがないとか、のろくなったという主観的感覚ではないもの)。
⑥【疲れが取れず、気力もわかない】ほとんど毎日の疲労感、または気力の減退。
⑦【自分の存在に意味を感じなくなる】ほとんど毎日の無価値感、または過剰であるか不適切な罪責感(妄想的であることもある。単に自分をとがめること、または病気になったことに対する罪悪感ではない)。
⑧【考える力がなくなり、物事を決められなくなる】思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日認められる(その人自身の言明による、または他者によって観察される)。
⑨【死にたくなり、その考えから離れにくくなる】死についての反復思考(死の恐怖だけではない)。特別な計画はないが反復的な自殺念慮、または自殺企図、または自殺するためのはっきりした計画。
B. 【症状により臨床的、社会的に障害を引き起こしている】その症状は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
C. 【物質の影響、他の医学的疾患によるものでない】そのエピソードは物質の生理学的作用、または他の医学的疾患によるものではない。
注:基準A~Cにより抑うつエピソードが構成される。
注:重大な喪失(例:親しい者との死別、経済的破綻、災害による損失、重篤な医学的疾患・障害)への反応は、基準Aに記載したような強い悲しみ、喪失の反芻、不眠、食欲不振、体重減少を含むことがあり、抑うつエピソードに類似している場合がある。これらの症状は、喪失に際し生じることは理解可能で、適切なものであるかもしれないが、重大な喪失に対する正常な反応に加えて、抑うつエピソードの存在も入念に検討すべきである。その決定には、喪失についてどのように苦痛を表現するかという点に関して、各個人の生活史や文化的規範に基づいて、臨床的な判断を実行することが不可欠である。
D. 【精神病性障害(統合失調症および類縁疾患)ではうまく説明できない】抑うつエピソードは統合失調感情障害、統合失調症、統合失調様障害、妄想性障害、または他の特定および特定不能の統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群によってはうまく説明されない。
E. 【躁病 / 軽躁病エピソードが存在したことがない】躁病エピソード、または軽躁病エピソードが存在したことがない。
注:躁病様または軽躁病様のエピソードのすべてが物質誘発性のものである場合、または他の医学的疾患の生理学的作用に起因するものである場合は、この除外は適応されない。
うつ病は本当に深刻な病気です。ただ、病気と位置付けられているということは、一定の治療方針が定められてきており、その効果が検討されている、ということでもあるのです。
うつ病になりやすい性格はあるのか
以前から、几帳面で真面目、責任感が強い人がうつ病になりやすいと言われていますが、日本人の多くはそういう側面がありますよね。それらの考えや感じ方が人並み以上に強い場合や考え方に柔軟性が乏しく、うまく開き直れない人などがうつ病になりやすいといえます。
ただ、人によって「これは大切」というものがあり、その大切なものとの関係でうまくいかないときには、柔軟な考えが持ちにくくなりますので、誰もがうつ病になる可能性がある、と考えた方がよいでしょう。
明日のブログでは、うつ病への対策について書かせてもらいます。
玉井心理研究室のホームページでも、様々な情報を載せていますので、ご覧ください。