心理雑感

村上春樹と心理療法

村上春樹の世界

 作家 村上春樹 この人のことは多くの人が知っているでしょう。
 彼の世界,などとたいそうなタイトルをつけてみたところで,単なる一読者がそのような世界を描き切れるはずもない…と思いつつ,そのままにして書き進めてみます。

 私がロンドンで生活している頃,夏目漱石がロンドンで滞在した家の管理人として住み込みをして何とか糊口をしのいでおり,そのオーナーの部屋の本棚に何冊か並んでいたものが私の村上春樹の本との出会いでした。

 その頃出会っていたのは,『羊をめぐる冒険』などの初期の本でした。
 軽快で楽しい文章を書く人だなぁと感じており,それは,今も変わりませんね。

 その後,彼の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は,彼の小説における表現する世界を方向づけているように思います。

現実の世界とイマジネーションの世界の交錯

 彼の小説世界は,現実と想像(イマジネーション)の世界の行き来が繰り返されます。
 そして,イマジネーションの世界とは言えども,それは単なる夢想する世界ではなく,意識をしっかりと持ち,挑戦される中で生き抜くことを求められる世界なのです。
 ユングという深層心理学を探求した精神科医は,イマジネーションとファンタジーを分類し,前者を意識をしっかり持ちながら想像していること,と区分しました。その区分では,村上春樹が書いている世界は,イマジネーションの世界と言えるでしょう。

 村上春樹の本を読んでいると,まるでアクティブ・イマジネーションの事例を読んでいるような気持になることがあります。
 アクティブ・イマジネーションとは,ユングが開発した心理療法の一方法なのです。
 強く意識を高める訓練でもあり,内的世界を広げていく取り組みでもあります。

 仕事,博士論文の合間の気分転換に,村上春樹の本に手を伸ばしていました。
 改めて,面白いなぁと考えていました。

 そして,彼の本と心理療法の接点について,少し紹介しておきたいと思っていましたので,書かせていただきました。

 本当は,本の解説を行いながらその世界を読み解くのが本筋なのでしょうが,今はそこまでは時間が取れませんので,村上春樹の本が好きな方は,一度アクティブ・イマジネーションの本も手に取ってみて頂くと,その共通点も感じられるかもしれません。

 村上春樹の本の登場人物の変化は,心理療法の取り組みのプロセスは同じではないのですが,心理療法の中でクライエントさんが自らの内に力を獲得していく過程と重なるのです。

 どこかで,村上春樹が故 河合隼雄先生(日本の臨床心理学における超有名人で,日本文化庁の長官もした人)と対話していたものを目にしたような気もします。
 河合隼雄先生も,ユング派の心理療法家だったので,そこも重なると思う所です。

サッカー日本代表 バンザイ

 昨日は,World cupでスペインに勝利,朝,布団の中で英語を聞いていたら「日本の結果,すごいよ」とTVに誘われました。
 日本,決勝リーグ進出,バンザイ!!

 

コロナ対策を行っている心理相談室 玉井心理研究室

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