「同一労働同一賃金」のすべて(水町勇一郎著)
図書館で、ふと目についた本があり、何となく読み始めました。近年、耳にする「同一労働同一賃金」についての本で、労働法制の専門家によるものです。
近年のこの分野における労働法制の移り変わりは大きいようで、少し前のことですが「雇い止め」など社会問題とされた派遣労働者やパートタイム労働者への処遇改善を更に進めるものであり、ニッポン一億総活躍プランに従うもののようです。
沢山の人が働きやすく、働き甲斐を持てる環境調整
この取り組みは、同じような仕事をしている場合に正社員とパートタイム社員に対する支払枠組みを同じにすべきである、ということを言っているのではないようです。実際には、長期にわたって職場に雇用され、転勤や転属など様々な変化を求められる正社員と、一定の枠組みの中で労働力を提供するパートタイム社員にはその給与体系が異なることは合理的である限り認められています。
ただ、職場環境や処遇についての均衡を進めること、別の支払い体系がある場合にはそれ自体は違法ではないが、その違いを説明できることが必要である、ということなのです。
改めて驚いたことは、このような法律を作っていくときに大切にされていることに、当然なのかもしれませんが、労使関係で裁判になった場合にどのような争点があるのか、その裁判が発生した際の証明責任などの詳細な検討でした。国は裁判を勧めているのでしょうか。その目的にはメンタルヘルスの視点も含まれているようですが、下にも書いたようにそれがうまく伝わっていないようですし、その取り組みは少ないと言わざるを得ないでしょう。
実際の訴訟の結果は、今までは裁判所によって判断も割れており、不合理な労働条件の差が生じていないか、そのことで働く意欲を損なうようなことがないように、ということのようです。
国が一度法律を作ると、大きく社会を動かしますし、確かに多くの影響があります。人の気持ちにまで…、というのはすごいことですね。ただ、なかなか人の気持ちは思い通りに操作できていないようです。
大きなブレイクスルーとなるか
世界の労働条件などとの比較もありましたが、日本は第二次大戦後に未曽有の成功を経験し、その成功経験が制度の固着を生んできており、実際にその制度疲労のように「ひきこもり」やフリーターといった様々な人たちが増えてきて、現実的に柔軟な働き方に対する変化を推し進める必要性が高まってきた、ともいえるのでしょう。
結局、人の気持ちがどのように前向きになるか、ということを国としては考えているようです。国も心理士のように人の心に影響を与えるような仕組みを作り、その方法として仕事をしやすい環境を作りましょう、としているのです。
結局、一人一人の能動的な力が大切 心理療法と同じじゃないか
偶然手に取ったものではありましたが、色々と気づきと学びがありました。私自身、この同一労働同一賃金についての理解が全く浅く、頭を働かせてこなかったことに気づきました。
私と同じように、多くの日本の国民にとってその目的は理解されにくいようです。左右両陣営や与野党の対立ばかりが目について、マスコミもその対立をあおり続けている状況は続きます。きっとこれからも。人は、理屈よりも感情で動くことが多いようです。
結果、国民自身が自ら情報を求め、検討を自ら行わない限りは、なかなか本当の知識には出会えず、ましてや知恵に辿りつくのはその先のことでしょう。
法律の全てについて理解を深めようというのは、司法試験の受験者ではない限り考えないでしょうし、それは多大な困難さを伴う取り組みでしょう。ただ、自分の目標や生きる意味を深く考えること、やりがいのある取り組みを持つことは大切です。
日々の身の回りのこと、例えば生活に関する制度、税金の制度(最近の消費税などもそうでしたね)なども全てを自分事として考え知識を得なくても、人にお願いしてよい部分も沢山ありますが、最後は自分の意志と決断だということは事実です。人はつい目先のことだけ考えてしまいがちですが、自分自身のみならず、自分の子供世代、孫世代まで広い視野を持って考えを巡らせたいものですね。
当研究室では様々な企業団体へのメンタルへルス関連支援も、行っております。休職・復職、ハラスメントといった基本的なことに限らず、人の気持ちがどのように変化していくのか、集団になった時の人の変化など、広くメンタルへルス・コンサルタントとしても対応しております。お問い合わせください。