明日に迫った公認心理師試験、昨日に引き続き書かせていただきます。
昨日は心理士の支援として、現実的な支援と内的世界に対する支援の両方があることについて、簡単に書かせていただきました。
それらについて、心理療法を進める、という視点と連動して考えてみると、トップダウンとボトムアップのアプローチともいえるのかな、という気がします。トップダウンとは、現実から心の深いところに向かうアプローチ、ボトムアップとは、心の深いところから現実に向かうアプローチのことです。
現在のトップダウンのアプローチのメジャーなものは、認知行動療法ではないでしょうか。一方、ボトムアップのアプローチの王道は、歴史的には精神分析でしょう。精神分析は、無意識の動きや訴えを探るために夢を使うなどして、意識的にコントロールできないものを利用するといった工夫をしました。これが、無意識というボトムにアプローチしていくことで、そこから意識というトップに向かう動きが進むことを目指したボトムアップアプローチといえるのではないかと思います。
一方、トップダウンの代表と述べた認知行動療法は、その創始者のA.ベックも精神分析を学んでいたのですが、無意識を明らかにするよりも、より分かりやすく意識できる思考にアプローチして、意識的に取り組むことから始め、その過程では感情を丁寧にたどることで無意識の世界にまで影響が及ぼされるような取り組みを進めたのです。
現在はエビデンス、つまり証拠が大切とも言われますので、認知行動療法にどちらかというと軍配が上がりそうですが、実際の臨床の場ではどちらのアプローチも大切です。トップダウンと言いながらも、気を付けないと表面的な問題解決が行われただけで、本人は変わっていないと感じてしまっており、自己のイメージも変わらないままであることも少なくないと思われる例も見かけます。
近年、特にボトムアップのアプローチについては、精神分析学ではありませんが、神経生理学の発展からエビデンスが固まりつつあり、トラウマへのアプローチとしては身体感覚へのアプローチも注目されるようになってきていますから、外すことはできません。
公認心理師の試験をきっかけに、ふと応援の気持ちを書こうと思いつつ、気が付いたら試験勉強には程遠いことを書いた気もします。どれもこれも学びたい、という人もおられるでしょうが、片方をしっかり学び身に付けることは、もう一方を身に付ける早道である気がします。
公認心理師は、医療、福祉、学校、司法、産業という5領域での活動があると言われ、それぞれの領域での法律を知り、社会と具体的につながりながら進めていく側面も強調されます。特に、相談室の中にこもって深く人の心の中に潜っているだけである場合には、より注意が必要です。満足感はあるかもしれませんが、外部の機関など連携することも視野に、説明できる言葉と能力を期待されているのです。個人流ではいけませんよ、ということをかつて受けた現任者講習でも耳にタコができるほど言われた気がします。それはそれでもっともなことですよね。
自分が行っていることを他者に説明できる、ましてクライエントさんに説明して、納得して一緒に取り組む、そんなことのために、勉強を重ねているのです。
明日、受験される方は頑張ってください。というか、明日を前にこれ読んでいないよな。