デズモンド・モリス 『裸のサル』の幸福論(新潮社)
このデズモンド・モリスというイギリスの動物行動学者,つまりサルなどの研究をしている人の本は,幸福ということをすごく客観的に考えるにはよいものです。
『裸のサル』という本で,とても有名になった人です。
「『裸のサル』の幸福論」では,複数の幸福をあげています。
それらを以下に示してみましょう。
標的の幸福
何か目標に向かって進み,掴み取ることによって生じる喜びですね
競争の幸福
他者などと争うこと,それ自体の喜びでしょう
協力の幸福
競争の幸福の裏側,より大きな達成に向けて人と協力して取り組む喜びですが,目標自体の到達は難しいとも言われます
遺伝の幸福
自らの種を再生産する,遺伝子を残すという欲求ですね
官能の幸福
快楽への欲求とも言えますね
脳の幸福
知りたい,という好奇心,頭を使う事,ゲームなどの競争とも繋がりますね
リズムの幸福
ダンスなど動くことから,ハイになることがありますよね
痛みの幸福
より質素に,厳格に,禁制の中で過ごしたいという欲求ですね
危険の幸福
リスクを取る,そのひりひりする感覚を求めることですね。その中で破滅を目指す人と,生き延びることを目指す人がいるようです
こだわりの幸福
何かに極端にこだわりを示すことで他を見ることができない,そのような態度で守られることですね
静寂の幸福
瞑想など,静かさから得られるものを大切にする人たちも多いですね
献身の幸福
何かに仕える,信心など,より大きなものを求める欲求とも言えるでしょう
消極的幸福
苦悩が基本であり,たまにだけ幸せが来る,という態度ですね
科学的幸福
ケミカル,ドラッグなどの道具を使って幸福感を得るという方法ですね。おススメはできませんが
ファンタジーの幸福
空想の世界には,果てしない幸せが拡がることがありますね
可笑しさの幸福
笑い,ユーモアは大切ですね
偶然の幸福
幸運というのが,本来の幸福という意味だそうです
これら人が幸福を追求する領域や方法,角度や態度は,裏表で対になるものがあったり,1つがもう1つによって重ねられていくというような側面もあるでしょう。
ただ,このデズモンド・モリスの幸福論は,とても客観的に人が幸福を感じるときを示しており,改めて先日このブログで共有した「独楽吟」のところでも書いたように,自分がどのような感覚を求める傾向があるのか,冷静に考えてみることは有益な気がします。
それは,自分を変化させるというよりも,自分の傾向性を明らかにすることで,自分の調子が悪い時の処方箋を作ることに益するのではないかと考えたのです。
調子が悪いときに,調子を改善する取り組みがありますね。しかし,ときに調子が悪いことを受け入れることが必要なことがあります。例えば,疲れているときなどはそうですよね。
調子が悪いときに,どのようにしてその時期をやりすごすか,その為の方法を知るためのヒントとして考えてもよい気がします。
これは,消極的幸福を視野に入れた態度なのかもしれませんが,それも一つの在り方ということですね。
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