認知行動療法

イメージを怖がることなかれ

イメージとは

 イメージとは,私たちの頭の中で浮かぶ様々なこと,という印象を持たれる人が多いのではないでしょうか。

 それもそう。
 そして,ふと過去のことを思い出しているとき,イメージが浮かんでもいますね。
 あの人は今何をしているのかな,と思い浮かべるときもそうです。
 嫌な記憶や感覚が襲ってくる,侵入思考もそんなイメージの一つです。その強く制御できない不快なものを,フラッシュバックとも呼ぶこともあります。
 そして,単なる頭の中にあるだけではなく,身体の感じも伴いますよね。

 イメージは,私たちにとって全体験的,つまり頭も体も心も,全部で触れていくものなのです。

イメージの自律性

 イメージの研究に少しふれていくと,イメージの自律性,ということにしばしば出会います。
 これは何かというと,イメージの私たちが好きなように動かせるものではない側面,のことを言います。

 浅く,思考領域にあるイメージは,「ちょっと思い浮かべてみましょう…」などという教示で浮かべることができて,操作することも可能です。

 例えば,「自然の中にいる象を思い浮かべてみてください」どうでしょうか。
 そして,「その象が紫色になっていることを思い浮かべてみてください」…これはどうでしょうか。

 一つ目は,すぐに浮かべられる方は多いでしょう。
 二つ目は,象を紫色にイメージし直すことができた人もいれば,難しくて混乱した人もいるでしょう。
 そう,2つ目に入って少し,イメージが操作しにくくなってきているのです。

 イメージは,それ自体が自然に動く,まるで小説家が「キャラクターが勝手に動くんだよ」なんて言うようなことと同じようなもので,私たちがそれに息吹を与えたものでも,こちらの思い通りに動いてくれないようになるのです。

イメージに対する捉え方

 このように考えてくると,イメージは苦しみを作ることもあります。
 嫌な記憶を思い出すとき,不快な気分になります。

 ただ,大切なのはその次です。不快な気分になっているとき,「私はこのイメージに付きまとわれている」と捉えるとどうでしょうか。そうです,私はイメージに負けている,イメージによって生じた不快さを調整することはできない,そんなような考えと繋がっていて,とてもネガティブな意味をつけてしまうのです。

 確かに,イメージによって不快な気分になったのですから,その不快さを否定する必要はありません。ただ,そのイメージに負けないで,「このイメージは私に挑戦してきているけど,それはもう終わったことだ。その確認かな」と捉えられるとどうでしょうか。イメージに負けて逃げ出さなくてもよい気分でしょう。

 このように,イメージ自体が私たちを不快にして苦しめる側面もあるのですが,それ以上にその次のステップ,イメージに対する自己否定的な捉え方,そしてイメージを過剰に怖れる心の姿勢が作られていくことで,ますます苦しみは増していくのです。

丁寧に進めましょう

 とはいえ,そのようなことは,私自身自らの体験として,実感として納得できるためにとても長い時間が書かいました。知識と実体験とは,少し時間がずれますよね。

 些細な例もあります。

 以前,夜中に目が覚めて,隣の部屋の端に誰かがいるように見えて,とても怖くなったことがありました。
 本当に怖くて,どうしよう,と思ったのです。お化けならともかく,泥棒か,どうしよう,と思いました。
 しばらく観察していて,どうしようもないから静かにその場所に向かい,もちろん怖いので手には棒みたいなものを持っていたと思いますけれど,近づくと単にカーテンの隙間からの光が家具を照らしていただけでした。

 これ,イメージです。こういうことなのです。

 長くイメージに悩んでいたものも,私自身が持つ思考やイメージの傾向も理解し,それを克服してきたものも少なくありません。
 そして何より,イメージによって人生を狭めるのではなく,人生を拡げるように使えるようにしたいものです。

 むやみやたらに,前向きに楽観的になることを目指す必要はありません。
 私も,とてもそんな人間ではないし,それは一時的には頑張っても疲れてしまいます。
 うまく自分と付き合っていく,そして自分の中に浮かぶイメージとも付き合っていく,そんなことも大切かと思います。

 イメージそのものを扱いきれないこともあるので,そのイメージに対する感情,捉え方,姿勢などを検討していくのです。

 最近は,本当にたくさんの本を読んでいて,おもしろかったセルフ・コンパッションについても紹介したくて,書いてみたいと思っているのですが,またの機会にしますね。

 昨日,パラリンピックが終わりましたね。
 選手たちの頑張り,その体験の積み重ねは,その人たちの心の深いところまで届いているが故に,私たちの心を揺さぶることがあるのですね。
 ありがとうございました。

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右の画像、どこにあるか見つけられるでしょうか(笑)

下のボタンをクリックして頂いたホームページの中にあるのですが、見つけられたらすごい!

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