心理療法・カウンセリング

イメージに触れていくことで癒されていく

「イメージと人間」「イメージ」

つい先日,藤岡喜愛(ふじおかよしなる)先生の二冊の本を改めて読みました。
藤岡先生は人類学者で,精神人類学を提唱した方です。
心理学で使われているロールシャッハ検査を用い,世界の発展途上の様々な土地に住む人たち,先進国の地方に住む人たちがどのように過ごし,イメージを持ちながら生きているのかを明らかにしようとした方です。

心理学でも,イメージの研究をしているとよく見かけるお名前です。
本がまた,人類学を土台としているので,視点が広く面白いのです。

イメージと人間―精神人類学の視野 (NHKブックス 213)
イメージ―その全体像を考える (NHKブックス (431))

人という存在を考えるに際して,人類学に留まらず,考古学や心理学,精神医学から生物学と広い視野から迫っていきます。まず,その話の展開に引き込まれます。

イメージとは

 かつて,このブログでも藤岡喜愛先生について少しふれたことがありました(ここ)
 イメージは,模写性と独自性を持つと言います。
 模写性とは,その字のごとく,その対象が心の中に写されるということです。「いす」という音を聞いたときに,日本語が分かる人であれば,その上に座るであろう椅子を思い浮かべる人が多いでしょう。これが,模写性です。
 独自性とは,その人によってそれが異なり,独自の要素が加わっているということです。「いす」という音を聞いたときに思い浮かべる椅子が,学校の椅子だったり,食卓の木の椅子だったり,パイプ椅子だったり,ソファー椅子だったり,その人の体験の影響や思い浮かべた時の身体の状態や感覚に強く影響されるのです。

 そして,人は,その人なりに思い浮かべやすいものがあるのです。
 その思い浮かべやすいものは,その人の独自の傾向性でもあって,そのイメージは「自己イメージ(自己像)」とも繋がっていると言います。

 つまり,イメージを作れるようになっていく過程,それ自体が人間の成長と繋がるのだろうと思われます。
 その自己イメージが固まっていくことは,アイデンティティーを確立する,ということとも同じような意味なのでしょう。アイデンティティーとは,心理学者のエリック・エリクソンが提唱した言葉で,簡単に言うと,自分は誰なのかが明らかである,ということです。

元型とも同じ

 分析心理学を提唱したユングは,人は集合的無意識を持つと言いました。これは,藤岡によると,いろんな異なった文化に生きる人についても,話を聴いていくととても理解ができ,共感することが多くなっていく。そのような理解ができてくということ自体が,人が共通に持つ理解の土台なのであり,集合的無意識と言ってもよいのであろう,ということです。
 集合的無意識という言葉が,分かりやすく頭と心に届くようです。
 人が育つ過程で出会う,様々な基本的な人たちとの関係,それは無意から深く意識できない無意識へと沈んでいき,その中で個人のイメージが作られていくのです。そして,その過程で出会う人などが,無意識に表れる“元型”と言われているのだな,とこれまた分かりやすく語られていきます。
 インナーチャイルドもその一つ,ということですね。

 そして,その人が持つ深いイメージに触れていくこと自体が,その人を癒していく,そのプロセスがどのように進むのかも示しています。
 箱庭を作ることで心理療法が進む,ということもその例ですね。
 自分の心の深いところで感じたことが,箱庭で表現されたり,その一部が言葉になっていき,それが他者に理解され,理解されたことを感じ,自分の深いイメージがより活性化していく,そんな過程でもあるのですね。
 かつて,催眠を一生懸命学んでいた時期がありますが,トランスとは何なのか,言葉にならないままに体験してきたことが,整理されていることを実感しています。

 ちなみに,これらの本は1974,1983年の出版ですから,随分と過去のことになります。

 最近は,新しい本も古い本も,休みの日には一日4冊ほどのペースで読み進めています。
 本当に,世界には沢山の知識があふれているのを感じ,楽しんでいます。
 これも,コロナで外出できない,剣道の稽古ができない(腰が痛くてドクターストップなのですが)などのおかげでもあります。そして,「基本的な知識は持っているよね」とさらっと迫ってくる先生方からのプレッシャーのおかげでもあります。

 いろんなことを読んで考えているので,それらを書いて紹介したいな,などと思うこともあるのですが,手が回らないというのが実情です…すみません。
 ときどき,ちょっとした心理学のこと,または本当に日々の思い付きや体験など,書かせていただいています。
 ときどき,訪れて読んでくれると嬉しいです。

 先日,ある人が「(玉井のブログの)特定のページ,苦しくなってくると読んでホッとしている」ということを教えてくれました。嬉しいコメントでした。

 玉井心理研究室では、心理療法・心理カウンセリングの提供をしています。また、個人のみならず、組織や会社団体などにおける心理支援も行っております。
 現在は、Zoomやスカイプ、電話による相談も強化しております。

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右の画像、どこにあるか見つけられるでしょうか(笑)

下のボタンをクリックして頂いたホームページの中にあるのですが、見つけられたらすごい!

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