心理雑感

三島由紀夫 自分との対話を続けた人

三島由紀夫

 昭和の文豪と言われた三島由紀夫、最後は自衛隊の市ヶ谷駐屯地で割腹自殺したので、そちらの印象が強い人もいるかとも思います。

 最近、あちらこちらでやたら三島由紀夫の情報に触れることが多く、先日、NHKのテレビで特集をしていて、録画を見ていたらやはりとても惹かれたので、少し書いてみます。

 三島由紀夫の本については、ロンドン大学在学中に、日本人の友人が大好きで、日本語に飢えていた私は、「金閣寺」など借りて読んだなぁ、文章がとてもきれいな人だなぁ、描写がすごいなと思ったぐらいでした。

 それも、随分と前のことだから、詳しくは覚えていません。

経歴

 にわか勉強よりも、昨今はちょっと調べると詳しい情報が沢山出てくるので、三島由紀夫の経歴は書いても仕方ないですね。
 ただ、詳しく知らない人もいるかも、ということを前提に、少しだけ書いておきましょう。

1925年(大正14年)生まれ 学習院で学び、幼少時は体が弱く文学に広く触れていた。
大学は父の進めて同じ東大法学部に進み、20歳(1945年)で徴兵され入隊前の検査で肺浸潤という誤診で入隊できなかったとのこと。そのことを喜ぶような人間ではなく、恥じる人であったと思われる。
川端康成に出会い、日本文学を守らんと、その才能を発揮し、早熟の天才と呼ばれ成功。
深く自分を見つめるような、人の心情を見つめるような言葉を紡ぐ。
ノーベル文学賞の候補者ともなるが、川端康成が受賞。
学生を集め、ともに体を鍛え、対話を重ね、盾の会を結成。
45歳で、日本の将来を憂え、割腹自殺。

果し得ていない約束

 三島由紀夫が昭和45年7月に、サンケイ新聞(現・産経新聞)に寄稿した随想「果たし得ていない約束―私の25年」のフレーズはあまりにも有名です。

<日本はなくなって、その代わりに、無機質な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がない、或る経済的大国が極東の一角に残るのであろう>

 この言葉、結構現代に繋がっているよな。預言者か?
 私のような心理臨床家からすると、日本人の虚無に向かう心性は明らかであり、それは大きなしばしば臨床場面で問題として立ちはだかってくるのだが、やはり三島のような天才はそれを感じているのあろう。

 今回、改めてテレビを見て、私は縁もなかったけれども、一人の優れた人間の姿を見させてもらった気がした。
 三島由紀夫は、自分と本当に対話し、かつ人と心の底から対話することをひたすらに求めた人なんだと思う。

 その対話を、心の栄養にもしたのであろう。

 私も、心理療法の中では「真実の対話」を目指してクライエントさんと向き合うが、三島由紀夫の生き方にとても心が揺さぶられた。
 私のような、心理療法家たちは、自分の心に向き合いながら、それを他者との出会いで確認しているところがあるのかもしれない。
 とても、三島由紀夫のように自らの言葉として広く世間に問うことまでは出来ていない気がする。職業柄、それができることが必ずしも良いことかとは思わないが…。しかし、優れた人を見て、我が身を振り返ってしまいます。

生きる意味

 三島由紀夫は、生きることを真剣に考え、生きる意味を考え、死ぬことの意味も考えたのでしょう。考え、考えて、それを自らの命を懸けて訴えることに誰か耳を傾けてくれ、日本を考えてくれ、と訴えていたことを感じる。

 そして、彼は本当に自分のためではなく、自我や欲求に囚われているのではなく、自分の信念を大切に行動の選択をしたが故に、今も多くの人に影響を与え続けているのですね。

 人の生きる根源に触れ、それを言葉としていったが故に、永遠に生きることを叶えたのでしょう。それは、目的でもないでしょうが…。

 改めて、三島由紀夫に惹かれ、彼の本を手に取ってみたいなと思いつつ、今は自分の仕事、研究に関して先に読みたい本が山となっているので、もう少し先の楽しみですね。

 NHKの特集の再放送、明日、2020年11月26日夜にもあるようです。
 関心がある方は、ご覧あれ。

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右の画像、どこにあるか見つけられるでしょうか(笑)

下のボタンをクリックして頂いたホームページの中にあるのですが、見つけられたらすごい!

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