産業心理

「組織管理と組織分析」 という研修を振り返って

ビジネス街

 私が講師として担当することのある研修で、あまり心理療法的ではない研修のタイトルです。ただ、人と組織を置き換えてみると、結構似ている気がしていて、私としては好きな研修のテーマの一つです。組織心理学の要素が大きいのですけどね。

 人は、シナジー効果を最大にするために組織を作りました。簡単にいうと、一人ではできないことを、人と一緒にやるとできることも多い、ということですね。一人では、できる手術も限られています。だから沢山の人が集まって、進めるのです。その裏でも、その手術を実現するために、技術の開発、技術の習得、機器の開発、連携訓練など、沢山の人やことが動いています。

 手術などは、目的が具体的で、決定すればそれに向けて皆が動きますから分かりやすいのですが、組織という大きな集まりとなると、その組織の目的、決定機関とその方法、組織のルールとコンプライアンス、意思伝達の方法と実行、行動マニュアルの有無、構成員それぞれの理解度と同意形成、専門家と総合一般能力を持つ人の発想や行動傾向の違い、個々人の性格・パーソナリティなど検討しないといけません。他にも、経営状況や社会的ニーズへの理解や適応も必要となります。

 職場環境や管理制度、評価制度といった物理的なハード面と、動機づけやコミットメント、欲求充足といった人間に対するソフト面も考えないといけません。なかなか興味深い領域です。

 ただ、最後は結局、人です。ちゃんと上の人が人の話に耳を傾けるか、決めたことは決めたことと維持するように情報発信をして意志を示し続けられるか、問題がある場合にその問題を取り上げて処理できるか、といったことです。人が、率直に人に関わること、率直な対話を持つことは、思いの他難しいのです。

 小さい組織は家族ですから、家族で考えてもよいでしょう。私も、家族をたくさん見てきたので、そんな見方に慣れてきたのかもしれません。家族の中でも同じです。人は、どうしても自分の持つパターンに縛られます。そして、自動化していきます。少し意識して、いつもと違うことをしてみること、そんなことからも新しい気付きが生まれます。コンサルタントは難しい用語や概念を使って整理しますが、それは客観視する工夫です。ただ、その中には情緒的なものも含まれていることが必要です。

 昨日は、とある組織でそんな知識に触れてもらい、自組織について客観的に観察する練習をしてもらい、人を巻き込むためのスキルを練習をしてもらっていましたので、そんな振り返りがてら、少しまとめてみました。いろいろな視点を並べただけの気もしますが、それも振り返る道具にしてもらいたいと思います。

 組織も、絶えず変化し続けて成長しいていくしかないですよね。ある瞬間によいものも、形骸化していきますし、どんな取り組みもデメリットを含まないものはありませんから…。この、終わりなきバランスを追求し続ける、それが人も、組織も生きているという証拠なのかもしれませんね。

働く人、働く組織を支援する

精神分析を創始したフロイトをご存知でしょうか。

彼は、人がよくなすべきことは「愛することと働くこと」と述べています。

近年、その働く人への支援は、従業員支援プログラム(EAP:Employee Assistance Program)の広がりもあり、少しずつ手厚い体制が整えられてきています。またその取り組みは、働く職場に対してどのように働きかけるかという形に広がりを見せてもいます。

実際には人と人の関わり合いのことですから、お互いに大切に向き合えるか、ということに尽きるのですが、それを職場で実践することはなかなか簡単ではありません。家族とは違い、適度な対人距離がある社会のほうが争いは少なそうですが、様々な利害も絡み難しくなりますし、人によってその距離感が違います。個人の価値観やそれを形作る土台となった体験を丁寧にたどり、お互いに腹を割って話しあう時間を取りたくても、業績やノルマのために早く動かなければならない、そんな現実にも追われます。

フロイト自身も対人関係に深く悩み、組織を作りながらも弟子に去られたり国を去らなければならなかったりしました。沢山の悩みがどのように乗り越えられてきているのか、積み上げられてきています。玉井心理研究室でも、その長く産業心理と臨床心理に蓄積された知見で、働く人と働く組織を支援します。

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